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30年後の同窓会のIMAOのレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
4.0
WOWOWにて鑑賞。
この映画の中で「どの世代でも戦争が起きている」というセリフがあるが、アメリカは確かに数年単位で戦争を起こしている。ベトナム戦争の後は湾岸戦争があり、そしてイラク戦争があり、その間にも小さな紛争にいくつも関わってきている…そのことに愕然とさせられるし、日本はつくづく平和な方なのだと思わざるえない。

2003年のアメリカ。あるバーに一人の男がやってくる。彼は実はこのバーの経営者ラリーのベトナム戦争時代の友人ドクだ。二人はもう一人の友人リチャードを訪ねる。そこでドクは実は自分の息子がイラク戦争に出兵したが、現地で戦死したことを告げる。そして一緒に息子の遺体を引き取りに行って欲しいと告げる。こうして三人は旅立つことになるが…

プロットだけ書いてみると暗い話の様に思えるし、実際明るい映画ではない。でもこの映画で描かれるアメリカの姿に、観客は納得できるのか?若い人ならきっと怒り出すかもしれない。こんな爺たちになりたくない、と。だが、彼らには彼らの30年があり、充分に傷ついた上での息子の死であり、彼らの旅路がある。そのことに、ある程度年取った者なら共感するだろう。だが同時に、やはり納得できない思いも生まれるだろう。その矛盾こそこの映画が描いたことであり、それはアメリカの矛盾であると同時に、世界の矛盾でもある。
例えば日本は戦争を実際に起こしてはいないが、確実に加担している。だがそれを一概に否定できるのだろうか?中東に派遣された自衛隊の隊員たちは、どう自分を納得させたのだろうか?そしてその家族は?その思いを一概に否定することは我々自身を否定することでもある。そのことはずっと考えるべきだし、この映画の存在意義もそこにあると思う。

監督のリチャード・リンクレイターは最近では『6歳のボクが、大人になるまで。』が代表作だが、『スクール・オブ・ロック』などのコメディーも得意なとても振り幅の広い監督だと思う。主演三人の自由な感じの芝居の付け方もとてもナチュラルで「見えない巧さ」が光っていた。ずっと若手だと思っていたが実はもう60歳!最早、ベテランもベテランだ^^
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