MasaichiYaguchi

30年後の同窓会のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
3.8
ベトナム戦争とイラク戦争を題材に、スティーブ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーンというベテラン演技派キャストでリチャード・リンクレイター監督が描くのは、30年振りに再会した男達のロードムービー。
このロードムービーの根底には遣る瀬無い悲しみがあり、それを3人の男達が下ネタやオヤジギャグを連発して紛らわしているように見える。
物語は、イラク戦争で命を落とした息子を引き取って故郷に連れ帰ろうとする主人公、〝ドク〟ことラリー・シェパードが、その同行者としてベトナム戦争時代の旧友2人、サル・ニーロンとリチャード・ミューラーに頼むところから幕を開ける。
ベトナム戦争を共に戦った3人は今では中年となり、ドクはポーツマスの海軍刑務所の売店で、サルはバーを営み、ミューラーは牧師となっている。
この3人の職業にはベトナム戦争で被った心の傷が影響していると思う。
死んだミューラーの息子を引き取って連れ帰るオヤジ3人の旅は珍道中と言っていいと思うが、旅が進む中で明らかになっていく息子の死の真相と、30年間封印してきたベトナム戦争時代に残した彼らの禍根。
彼らは悲しみを振り払うようにふざけながらも、それらに向き合っていく。
この作品を観ていると、その時の為政者によって引き起こされた二つの戦争が、如何にアメリカ社会や人々に深い影を落とし、その闇の中で未だにもがいているのが伝わってくる。
そんな〝痛み〟を癒し、救いの手を差し伸べる存在を、リチャード・リンクレイター監督は作品を包み込むように温かく描いていて心の琴線に触れます。