ワルキューリ

30年後の同窓会のワルキューリのレビュー・感想・評価

30年後の同窓会(2017年製作の映画)
4.2
イラク戦争で亡くなった 兵士の父親と、父親の戦友たち。
『30年後の同窓会』のタイトルから父親の傷を慰め合うゆったり人情ムービーかなあとナメてかかったらとんでもねえシロモノでしたよ。さしづめ『マッドマリーンズ 怒りのデスロード』!

亡くなった息子の願いは何なのか、国を愛するとは、軍人としての務めとは…
容易には出せない答えだけども、この中ではほんの数日で答えを出さないといけない。そうなるとあれこれイベントを盛り込みそうなとこ、その過程を旅行仕立てにして人生の旅と重ね合わせてちょうどいい塩梅にしてる。

真面目で誠実な父親シェパードことドク(スティーブ・カレル)、お調子者に見えるが内に秘めた繊細さが随所に出るサル(ブライアンクランストン)、聖職者として生きる一方自分を隠す負い目のあるミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)の三角関係が見ていて気持ちいい。ミューラーがサルにちょっかい出されて思わず地が出るところはよく分かってんなあ(笑)

はじめの方はサルとミューラーのアドバイスは悪魔の誘惑天使の囁きのようだったけど、ある出来事を境に少しずつ心を通わせ始める。この時サルが見せる凄みにブライアンクランストンの力を感じた。ドクやミューラーと違ってサルは目に見えて負った傷はないように見えるけど、「言葉に出せない痛み」とはこのことなんだろう。

その痛みを一旦は降ろせたものの、再び背負うかどうかの決断を迫られる…この場面こそ戦争の愚かしさを集約しているのではないか。

彼らの胸にあった旗は正しい人に捧げられ、ようやく『終戦』を迎える…