足拭き猫

枝葉のことの足拭き猫のレビュー・感想・評価

枝葉のこと(2017年製作の映画)
4.1
自分が育った町を歩く、家の前に着く、扉を開けておばちゃんに会う、兄と慕う人と話をする、父親を訪ねておばちゃんの見舞いに行くように説得する、愚痴ばっかり吐いている仕事仲間と飲む、ガールズバーに出かける。小さな土地で繰り返される行為からひとりの男の育ちと葛藤があぶりだされる。
背筋を伸ばして本を読む人。何をきっかけに爆発してしまうのだろうと、不穏を孕む緊張感。
カメラが手持ちで画面が揺れまくっていたので最初は酔わないか心配だったけど、いつの間にか引き込まれていた。

おばちゃんと会話している時は優しい空気が流れて、ああ、隆太郎はこの人がいなくては生きていけないのだ。最後、父親に「絶対に病院行けよ」と何度も言う。他者を通して憎んでいた人への愛情が生まれて、ほんの少しだけ前へ踏み出したんだなぁ。

前情報がなく行ったので、途中までおばちゃんが実の母親かと思っていた。なので会話からおばちゃんは痴ほう症なのかなと勘違いした。

終了後、二ノ宮監督が少しだけご挨拶。
とってもにこやかで洋服もカラフル。作品とのギャップでしばし茫然としてしまったのでした。