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判決、ふたつの希望のkurageのネタバレレビュー・内容・結末

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

レバノンといえば、最近ではゴーンの逃亡先で知られているが、イスラエルやシリアに隣接した地中海沿岸の国で、内戦やパレスチナ難民キャンプ、イスラエルによるレバノン侵攻など、自分の中ではあまり明るいイメージはない。ベイルートなどは「中東のパリ」とも呼ばれていた時期もあったので、きっと美しい街だったのだと思うのだけど。

そんな土地と歴史を背景に「人と人の分断」の問題を描いたヒューマンドラマ。紛争でふるさとを壊滅させられたキリスト教信者のレバノン人自動車修理工と、誇り高き賢明さ故に思わず軽口を叩いてしまうパレスチナ難民現場監督の、小さな小競り合いからドラマは始まる。

個々のもつ背景が法廷を通して、徐々に明らかにされていく。行動は個人に積もった感情によって突き動かされている。だから、おのおのに新しく芽生えた感情によって解決へも向かっていける。主人公ふたりの目が合ったとき、見えない友情、ふたつの希望が芽生えたように思えた。

あとから監督インタビューを読んでみたら、社会問題を描くつもりはなく自身の経験してきたことの延長線にあるドラマを描いたとのこと。監督はレバノン侵攻の影響でアメリカに渡ったというが、作品からは一度大きなものからの呪縛から離れてみた人にしか見えないであろう冷静さが感じられた(気がした)。

ひとつだけ気になったのは、対立する弁護士の親子のドラマは必要だったのかな、ということ。

とはいえ、とても面白かった。レバノン人側の主人公であるトニーの奥さん、凛とした佇まいが良かった。
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