KATO

ジュリアンのKATOのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
4.0
虚構よりも怖いのが現実。
DVというものの恐ろしさを体感できる作品。

11歳の少年・ジュリアンが、必死に母親を守ろうとする姿が健気で、父親と対面しているときヒリヒリしてしまう。
あんなに身体の大きさが違う父親から脅されたら、怖くて仕方がないだろう。見ているこちらも、驚いて身体が何度も飛び跳ねてしまった。そのくらい、父親の演技は素晴らしい。リアリティがあるという意味において。
目は真っ暗で、何を考えているのかわからない。それでいて、たまに優しい言葉?(他人にとっては都合のいい言葉)を吐いたりするのである。
こうやって騙されるんだよな。

母親の対応にため息が出てしまうが、相手が何をいっても聞かないので、結局あれ以外の行動を起こすことができないのだろう、と。知人男性と話しているだけで嫉妬からの暴力につながるわけなので、何もしないのが吉という判断になるのは仕方ない。
あまり刺激したら子ども、特にジュリアンに危害を加えられるかもしれないと思えば通報も難しいのだろうな。

ラストシーンの恐ろしさは一級。ほぼ生活音のみで構成されていた作品に、生活からはかけ離れた音が登場する。心臓をバクバクとさせながら、張りつめたなかで物語の終焉を見守った。
ラストシーン、結局私たちは当事者ではないということを突き付けられる。当事者にしかわからないことがあるし、じゃあ私たちができることって……?

リアリティのある作品はとても消耗する。
これは誰にでも起こりうる、隣で起こっているかもしれない物語だ。
*
ジュリアンの役の男の子が可愛くて可愛くて……次は笑顔の彼をスクリーンで見たい。
お姉ちゃんの問題が、何も解決していなかったことが気になった。
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