凛太郎は元柚彦

さびしんぼうの凛太郎は元柚彦のレビュー・感想・評価

さびしんぼう(1985年製作の映画)
5.0
〝映画〟という魔法が作りだす、時間の枠組みを超えて循環する愛の物語。
思春期の少年の日常は、ある時から不思議な格好の少女が現れはじめることで変わっていく。突然現れては、イタズラをしたり謎のセリフを残して去っていく少女は「わたし、水に濡れると死んじゃうの」と言う。少年はその幽霊のような少女を〝さびしんぼう〟と呼び始める…。
大林宣彦のセンスが凝縮された傑作。広島の尾道というロケーションをセピアカラーで映しだし、胸が締め付けられるような切ない恋と友情、親子愛を紡ぐ。
放課後に教室でピアノを弾く少女を追う、フィルムの入ってないカメラ。そして主人公のモノローグから始まる冒頭から最高だな。ノスタルジックな尾道の海に浮かぶ富田晴子の微笑がたまらん。マジでどこを切り取っても絵になる。
概念的な映画だから考察する必要もなし。故にツッコミどころもスルー。
映画という魔法にかけられた至福の2時間を堪能させてもらった。