otomisan

ラストマン・スタンディングのotomisanのレビュー・感想・評価

3.7
 もともと陸の孤島のジェリコの街が禁酒法のおかげで密輸組織の根城に。さらに対立ギャングの進出で大ゲバルト、住民はみんな逃げだして残ったのはギャング傘下の酒場と女郎屋(ホテルという)に唯一自由経営の葬儀屋ばかり。
 官憲も抱き込んだやりたい放題だが目的はあくまでも酒の密輸だから、ギャング同士、均衡点の合意ができれば金持ち争わず。ところがヤバ気に渡ってた綱がブルース・ウィリスをからかったおっちょこちょいのせいでしっぺ返しを食らってちょん切れる。
 しかし、酒の密輸も立派にビジネスで、こいつを安定操業、あるいは相手ギャングを蹴落とせるならさっきの敵も明日の友、もっと大きな敵への正面装備に腕の確かさも証明済みだ。
 と、そんなBWもメキシコに密出国を図る強盗で、行きがけのジェリコで踏んだ糞を雪がねば先に進めない。気に食わない二大ギャングをからかうような、根に持つような調子で翻弄して、サイコなクリストファーまで相手に伸して伸されてしながら、どんな弱みがあったのか知れないがギャングどもに引っかかってた女たちを相次いで逃がしてゆく、これがBWの人生テーマなのかとも見えつつ、悪党は悪党同士で同類を食っていくしか生きようも逃れようもない。
 通りすがりの女たちを見送ってすってんてん。生き延びる先はやっぱり大砂塵の荒野というわけだ。これを監督がなにを言ったかしれないが、黒澤の用心棒と並べてみるほうが間違っているし、トマト風味のイーストウッドと味比べするのも無駄なことだが、胡椒を切らしたしょっぱいだけのステーキのような感じの30年代大荒廃アメリカらしいジェリコ物語の死屍累々をアメリカ人ならずとも悲しく思うのは無理もないだろう。そんな八つ当たり気分で辛めのスコアを出したならそれに同情すべきか餌食の監督に同情すべきか。
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