春とヒコーキ土岡哲朗

ターミネーター ニュー・フェイトの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

良いキャラぞろいだが、前提が悪すぎる。

ショッキングな始まり。ジョン・コナーが、T2のあとすぐ殺されていたという設定。しかも、シュワ型ターミネーターで動揺させた隙をついての攻撃で、T2の感動を思い切りボコボコにする始まり。これは正直、そんな残酷にしなくてもいいじゃない、が勝る。ジョンはどこかで生きていても新キャラを主人公にした話はできたと思う。
続編を作るときに、過去作で綺麗にまとまったように見えるところを突いて事件を起こすのは常套手段。『BTTF2』『ダークナイト・ライジング』『まどかマギカ反逆の物語』。それらの成功している続編は、過去作の感動を、残酷さで台無しにすることはしていない。どれも、楽しいものを楽しいハラハラで崩したり、険しい決断の余白を突いたりより険しい展開にしたりしている。
この映画自体は、キャラクターはみんないいし、話もアクションも飽きないが、それでも取り返せない悲しさから始まっている。

メインキャラが4人とも別々に主人公。
グレース、ダニー、サラ・コナー、老いたターミネーター。グレースが半マシンな設定は、老ターミネーターが出てきてからはかぶっているにも感じたが、前半はかなり彼女の清潔なたくましさが引っ張っていた。サラ・コナーも年齢を重ねて、今の年齢での渋いカッコよさが出ていた。ダニーも、ただ助けられる存在にならず、後半で体を張る辺りからはシリーズを背負う新主人公になれていると思った。そして、シュワ。白髪交じりで無精ひげの生えたルックスがめちゃめちゃカッコいい。
この4人、全員が主人公属性なのが面白い。ダニーを守る王子的側面を持つグレース。世界の重要人物であることを知らされ戦いに身を投じることになるダニー。初代主人公のサラ・コナー。シリーズの看板をずっと背負うシュワルツェネッガー。これはかなり特殊な、この映画だからできている面白さで、この4人でのロードムービーな時間も、クライマックスのバトルも、どこを見ても主人公の話で贅沢だった。今までのターミネーターシリーズ同様、この映画もなかったことにされるかもしれないけど、ダニーの物語の続きを見たいと思った。ただ、ジョン・コナーというもう一人の主人公を雑に扱ってしまったことが、なんとも悔やまれる。