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小公女のSPNminacoのレビュー・感想・評価

小公女(2017年製作の映画)
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「借金せず生きるのが目標」で「煙草とバーで飲むウィスキーと愛する彼氏があればいい」。部分白髪の長い髪で重ね着し、家財道具一式を持ち歩き、家事代行でお金を稼ぎ転々としながらブレない女。
そんなミソは、泊めてもらいに訪ね歩く先で友人たちの写し鏡となる。家もお金もないけど身軽なミソと対照的に、かつてのバンド仲間たちは人生のしがらみに縛られてる。結婚離婚子育て仕事…みな若い頃と違って我慢や妥協や犠牲で折り合いをつけるしかないのだ。
必要以上に求めず、礼儀や常識を持ち、誰より友情に篤くて、世話になった家々で卵パックと掃除や料理をお返しする旅人ミソ。ただ他の人とはプライオリティが違う、大事なものが変わらないだけ。家賃のためにそれを手放すなんてナンセンス…私にはミソがよくわかる。昔仲間たちも本当はわかってる。
けれど、「都会で聖者になるのは大変だ」。喫煙者というだけで肩身が狭いアウトサイダーだし、何もかも値上がりする一方の物価が彼女を追い立てる。人々は変わり、変わらない者だけが留まることを許されない。そして、そんなミソを愛する彼氏との関係も同じままでいられなかった…。切ないけど、彼氏との関係がいいんだよね。彼もすごく正直だから。
とかく放浪は孤独や危険だったり、自己破滅的に荒んだりしがちだし、女の場合には特に事情が付き物となりがち。でもミソはシンプルで、ハードボイルドな気負いがない。現代のフェアリーテイル、心の中に生きる聖人伝説のようなもの。話の内容は全然違うけど、『ある女流作家の罪と罰』(好き)と似たものを感じた。これも”There Is a Light That Never Goes Out”。
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