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運命は踊るのNightCinemaのネタバレレビュー・内容・結末

運命は踊る(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

カメラワークと、セリフのないシーンの余韻がとにかく美しい。時々、ちょっと間延びしたシーンもあったけど…ストーリーは、とても悲しかった。なぜか『女は二度決断する』を思い出した。

中盤からのヨナタンの任地のシーン。水たまりに浮かぶ一点の火の光や、4人がせまここしく並んだ小屋。ゆったりと優雅に移動するラクダ。広い空。傾き続ける自分達の運命をただただ受け入れているかのような、抵抗のない「無」の時間がじんわりと伝わってくるシーンだった。

それと比較して、ヨナタンの訃報を受けたミハエルの家。けたたましく鳴る不快なベルの音からすべてが始まり、脱力したミハエルの姿が天井から映し出され、時が止まったようだ。悲しみと不信、怒り、絶望。ありとあらゆる運命の仕掛けに翻弄され、何とかヨナタンを早く取り戻そうと取り乱す一家。

シーンの切り替りでヨナタンはキレキレに踊り始めるしで、違う映画を観ているのではないかと錯覚するようだった。君のことで今みんな大変だよー!

「子供を産みたくなかった。いつしか子供がいることが当たり前になって、その喜びを忘れてしまうから。」ヨナタンを失ったダフナは言った。

ミハエルがヨナタンを早く連れ戻そうとしたのは割と当たり前というか、そうなってしまうだろうなぁと。けれどもしミハエルがこのダフナの言葉のような喜びをを思い出し、一度立ち止まって「訃報が間違いで良かった」「ただ生きてくれているだけで幸せ」ということをきちんと感じていたら。運命は果たして変わったのだろうか。

舞台と監督の出身がイスラエルということで宗教的なテーマも入っているような気がしたのですが、よくわからず…。

個人的にはミハエルが聖書とアダルト本を交換してしまうあたりかなり攻めてるなと思ったし、聖書を捨てた=運命や定めをただ受け入れて生きるような人間ではない、というような印象も受けました。けれど結局、運命からは逃れられないものなのか。

(これ、もしかしたら聞き間違いかもしれないけど)ミハエルが地雷を逃れた直後にヨナタンを授かったことや、ヨナタンと同姓同名の兵士との取り違えがあったこと、ヨナタンが誤って罪の無い人に発砲したこと、予定していなかった帰省で命を落としたこと。このどれもが繋がって一人の人生が出来たがっていたと思うと、運命というのは恐ろしい。

取り返しのつかない後悔と、もう二度と戻らない息子。もがいた結果の皮肉な結末に笑ったり泣いたりしながら家族三人で見つめ合い、娘が去った後に二人でダンスする最後の食卓シーンは、本当に素晴らしいものだった。
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