O次郎

運命は踊るのO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

運命は踊る(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

運命の皮肉と因果応報を描くエキゾチックな意欲作。
息子の戦死の誤報を引き金に、熟年夫婦の関係が瓦解してゆく様を辿っていく。

全体として意図的に観客の期待を外してもどかしくさせるような構成が取られているのがなんとも印象的。
一番象徴的なのが息子の死に様の描写。
冒頭が熟年夫婦への軍からの息子の市の報告から始まるが、それに嘆き悲しむ親類の悲嘆が延々描かれ、生前の息子の姿が描かれるのはようやく中盤。
戦士は誤報だったものの、それに怒った父親がコネを使って息子を呼び戻そうとし、その帰還途中で事故死してしまうのだが、それに関しても伝聞で夫婦が動転し関係破綻する様が展開されるばかりで、物語の最後にようやく、息子の乗る車が帰還途中でラクダを避けようとして横転する模様が本当にサラッと映って物語が終わる...。

息子の死......父親は悲しみのあまり自分を罰しようと熱湯を手の甲にかけて火傷し、母親も食器洗い中に無意識にタワシで指を擦りむけるまで擦り付ける。
そのお互い傷だらけの手を握り合うが、結婚指輪は父親しか嵌めていない、というカット。
お互いに抱える痛みは均質ながら、向き合って乗り越えるには気持ちが擦り切れ過ぎて絶望的に噛み合わない、珠玉の画。

メンタリティはもとより、おそらくお国の宗教観念が色濃く反映されているので、そこに踏み込んで観られるか否かで評価が分かれるように思う。
O次郎

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