しゆ

運命は踊るのしゆのネタバレレビュー・内容・結末

運命は踊る(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

レビューを見ていると、「不条理な悲劇」ということばがよく出てくる。

たしかに、主人公ミハエルの息子ヨナタンが就かされている兵士としての任務は、荒野の傾いたコンテナの中で毎日ただ時が過ぎていくのを待つばかりの、茶番のようなもの。
おまけに、毎日動物の餌のような肉の缶詰を食べさせられているが、勝手に任を離れることもできず、囚人のような暮らしぶり。
いつ終わるとも分からない生活を送る彼らの姿は、不条理劇「ゴドーを待ちながら」を思わせる。

しかしながらマオズ監督が言うように、息子の死は「自分が息子を助けるのだ」と思ってしまった父ミハエル(彼自身もまた軍の任務に就いていたというバックグラウンドや、自らの力を過大評価するような人間性、飼い犬を蹴りとばすような暴力的な所業)に課せられた咎であり、因果応報のことだった。
父の所業が災厄となって息子の身に降りかかるという構図は、イスラエルという国がパレスチナとの関係において、同じことの繰り返し…同じ場所で同じステップを踏み続ける「フォックストロット」を踊ってきたにすぎないということの比喩になっている。

ヨナタンにとっては「不条理」に思える現実も、若い彼らもまた軍との関わりにおいて新たな罪を生みだしてしまったことから、最後の結末は彼ら自身の行いによる因果応報だったとも受け取れる。

終わりのない「フォックストロット」を、いつ終わらせるのか。イスラエルという国に限らず、どの国もが持つテーマであるように思える。
しゆ

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