イチロヲ

ファウストのイチロヲのレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
4.5
ファウスト博士の魔導書を手に入れた男性が、自身の魂と引き換えにして、悪魔を隷属させるための契約を結んでしまう。希代のシュールレアリストが、ゲーテの著作を映像化している、サスペンス・ホラー。

現実世界と劇中舞台劇を交錯させながら、鑑賞者を虚実の皮膜へと落とし込んでくる。舞台劇のシークエンスでは、1970年の中編「ドン・ファン」で用いられている大きな木製人形を採用。「人形に操られる人間」という、倒錯的感覚が疾走している。

何よりも、町の路地裏と異世界が地続きになっており、探索劇のドキドキ感が途切れないところが素晴らしい。「真理を得ようとしたけれど、結局は目先の欲に負けてしまう」という、主人公の人間心理にもシンパシーが感じられる。

錬金術で悪魔の胎児を誕生させるシーン、魔法陣を使用した召喚シーン、天使が妨害してくる契約シーン、道化師が悪魔をこき使うシーンなど、見どころは枚挙に暇がない。コミカルとグロテスクが共存しており、気持ちの良い眩暈に見舞われる。
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