ひこくろ

飢えたライオンのひこくろのレビュー・感想・評価

飢えたライオン(2017年製作の映画)
4.1
リアルに描くことの意味ってなんなんだろう、と考えさせられた。
映画は音楽も使わず、カメラワークも排除して、可能な限り、そのままのリアルを描こうと努める。
でも、リアルに描かれたものは必ずしも面白いものとは限らない。
特に前半の女子高生たちの日常の風景は、リアルであればあるほどに味気なくつまらない。
トイレで化粧しながらワイワイと悪口を言い合う姿などは、正直、醜悪ですらある。

一方で、リアルを追求することにより、たとえようもない切実さが伝わってくるのもまた事実だ。
登校拒否をするようになった瞳の元へ、毎日迎えにやってくる三人組の気持ち悪さ。
どこまでも他人事でしかない、瞳以外の人の反応。
こういったものは、リアルだからこそ、より伝わってくる人の醜さ、残酷さ、気味悪さなんだと思う。

リアルであるからこそ捨てたものと、リアルに描いたからこそ溢れるものが、この映画には両立している。

そして、監督はリアルから響いてくる人間の醜さを描くことに容赦がない。
物語としては終わっている、瞳の死後を、さらに描いていくことで、それはさらに強調される。
どこにも救いが見いだせないほどに徹底的にだ。

観ていて気持ちのいい映画では決してない。
ただ、人間とは本質的に醜さを抱えて生きるものなのだろうとは、気づかせてくれる映画だとは思った。
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