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シリアにてのlpのレビュー・感想・評価

シリアにて(2017年製作の映画)
3.3
第30回東京国際映画祭にて鑑賞。ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で観客賞を受賞したベルギー映画。

シリア内戦下、激戦地に隣接するアパートに暮らす一家と、一家に匿われている隣人の24時間を描くサスペンス。

またもや家(部屋)を舞台にした密室劇。描かれるのは「いつ・誰が・何に巻き込まれてもおかしくない危険な状況」と、その真っ只中にいる家族とその隣人のみ。屋外のシーンは出てこないけど、危機的状況下の日常描写を通じて、「戦火とはこういうものだ」と訴えかけてくる力は感じられた。「水が出ない」など、さり気無く状況が差し迫ったものであることを匂わせる点も巧い。

今作の人間ドラマは、家族と隣人を守ろうとする母親、悲劇を免れたことに安堵する娘、勇気ある行動に出る女性、人命救助に奮起する青年など、危機的状況下での様々な心情を描き出す。そして、登場人物の心情とは無関係に、状況が変化する厳しさも併せて描く。そこに安直さは無く、リアリティを追及していることが感じられた。

『この世界の片隅に』とは異なり、戦況を容易に把握できるようになった、現代における戦火の日常を描いた力作。今後も日本で観られる機会があることを期待したい。
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