深獣九

怪怪怪怪物!の深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞前の想像とは、まったく違っていた。てっきり、いじめられっ子が怪物を使って復讐する話だと思っていた。だが、それだけではなかった。もっと複雑、というかまとまってない印象。

登場人物とポイントは、大きく分けて以下の通り。

①怪物
呪術により、人を喰う怪物になった姉妹。妹が高校生の悪ガキにさらわれ、無残な仕打ちを受ける。姉は妹を救うため、悪ガキが通う高校の生徒を片っ端から襲う。

〈ポイント〉
・姉妹愛
・スプラッター
・クリーチャー

②悪ガキ
同級生をいたぶることで、気分を晴らす悪ガキとその取り巻き。やり口がエグい。老人をおもちゃにしたり、怪物を拷問したり、徹底的に胸糞が悪い。ただし、ちょいちょい不幸な境遇が垣間見えたり、恋愛模様がある。それ必要?

〈ポイント〉
・拷問
・マジムカつく
・はやく酷い目にあえばいいのに

③主人公
いじめられっ子。怪物の味方。捕らわれた怪物妹に、食料として自らの血を与える。最終的には悪ガキグループを裏切り、復讐を果たす。

〈ポイント〉
・スカッと爽快
・悩める若者
・葛藤と成長


これだけだと、普通のスプラッター映画のようだが、そうでもない。なぜなら、主人公のいじめられっ子がちと曲者で、ただいじめられているだけではないのだ。そうそうに悪ガキグループの仲間入りをして、悪ガキ同様老人や怪物に手を出す。むりやりやらされているはずなのに、時折笑顔を見せている。
私は困惑する。いじめられっ子の復讐譚ではないのか?なぜ悪ガキに加担する?
主人公の立ち位置は被害者なのだから、悪ガキとつるんでは駄目だろう。あれだけ虐げられてるのだから、近寄るどころか悪ガキの顔も見たくないはず。一緒に行動するのは違和感。言いなりになってるのかもしれないが、怯えた様子もないし。怪物妹を逃がすタイミングだって、いくらでもあった。逃せば復讐もたやすかったろうに。
それに、なんといってもクライマックス。怪物姉に襲われパニックになっていたのはわかるが、ふたりを逃がすどころか退治してしまったのだ。怪物姉妹の悲しい境遇を浮き立たせること、主人公の最後の行動につなげるために必要だったシナリオなのだろう。だが、これで「主人公=悲しき被害者」との構図が完全に崩れた。脚本家、焦ってしまったのか。
また、怪物姉妹が妙にきれいな顔をしてるのも、失敗している。鑑賞者の感情移入を強めようとしているのだろうが、怪物はあくまでも怪物としてのビジュアルが望ましい。
ホラー、スプラッター、姉妹愛、伝奇譚などいろいろ立てたのだが、有機的に結びつかなかった。残念。

とはいえ、異常教師の死に様やバスに追い込まれた高校生大虐殺、知的障害のコンビニ店員など見どころもある。
民話の現代版を楽しみたい方には良いかもしれない。
深獣九

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