真一

怪怪怪怪物!の真一のレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
3.2
 殺されないためには、自分も「人でなし」=「怪物」になるしかないー。壮絶なイジメを経て手にした主人公の悲しい教訓だった。

 舞台は、台湾。廃屋の一角で、高校生たちがゾンビに似た怪物女子を捕獲し、面白半分に拷問を加えていたところ、怪物姉に気づかれ、復讐を受けるという話。見所は、鎖で縛られた怪物妹の歯をペンチで抜くよう不良に命令されたいじめられっ子リンの、恐怖に満ちた表情だ。

 リンは、怪物が怖かったんじゃない。命令に従って拷問に手を貸せば、自分自身が不良たちのような「人でなし=怪物」になると思い、恐怖したのだ。この展開は、ホームレス狩りで度胸試しを強いられる気弱な少年を彷彿とさせる。

 ヤマ場は、凶暴な怪物(姉)が、ついに妹の救出に現れるシーンだ。現場でたった一人生き残ったリンが叫ぶ。「僕はこの子の味方だったんだよ。ほかの奴らと違うよ!」「この子が餓えないよう、僕は血まで飲ませてあげたんだよ。助けて!」

 リンは懸命に命乞いをするが、怪物(姉)に殴り飛ばされる。何度命乞いをしても、ぶっ飛ばされる展開が続く。殺す気なのか、手心を加える気なのか、怪物の真意を読めないリン!その極限状態で、リンは闘う決意を固め、太陽光を取り入れて怪物姉妹を焼き殺す。

 だが、ストーリーはバッドエンドへ転がっていく。炎の中で泣き叫ぶ怪物妹。同じように焼かれながら、懸命に妹をかばう怪物姉。悲しみと絶望の叫びを聞くリンは、ついに悟る。「この姉妹は人間だった!本当の怪物は、イジメを娯楽にするクラスの連中だ。奴らを倒す!」

 ここで、前半の場面で不良のリーダーが口にした台詞が効いてくる。リーダーのドアンは怪物妹を捕獲した時、笑いながら「こいつは怪物だ。人間じゃないんだから、殺しても構わない」と言い放っていた。

 「怪物は人間じゃない。殺してOK」。このキーワードを胸に、リンは、イジメっ子という名の「怪物」が横行する高校に戻り、自らも「怪物」になるべく衝撃のラストシーンへ突入していく…。

 リンの目には、こんな風に映ったんだろうな。

「本当の怪物」=不良グループ、担任教諭、駄菓子屋で賽銭泥棒したガキ、最期のリン
「本当の人間」=怪物姉妹、ホームレス、駄菓子屋の店員さんとおばあちゃん、仲間はずれのクラス女子、初期のリン

 人でなし→怪物→殺してOKという「悟り」を開いたリンは、バトルロワイアルを思い出させる胸くそエンディングを演出する。ただ、ギスギスした現代社会に暮らしていれば、誰だって、あんな気持ちになる時があるだろう。ラストシーンでカタルシスを得たとしても、おかしくないと思う。タクシードライバーで襲撃をやりとげたロバート・デニーロが指鉄砲を自分に向けるシーンのように。

 最後の大量殺戮に爽快感を抱いたあなたも、正真正銘の怪物だー。監督のメッセージは、この点にあるんだろうな。

 本作品は、若手アイドルを起用した台湾のB級ホラー映画だけど、起承転結がバッチリで思ったより面白かったです。ある程度のグロ耐性があれば、そこそこ楽しめると思います。
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