あいうえお

4月の終わりに霧雨が降るのあいうえおのレビュー・感想・評価

4月の終わりに霧雨が降る(2017年製作の映画)
4.4
映画監督になるという選択を肯定するという意味で、自身の半生自体を肯定する映画を撮るのだけれども、発展しなかった恋をどう位置付けるのかという葛藤があった、、、
すなわち、発展できなかった恋を正当化するには?という問いに対する答えを監督=主人公は模索していた。そして、たどり着いた解決方法こそが、彼女に扮した役者に『これでいいんだよ、これで幸せ』と歌わせるということだった、というラスト。
筋道として大切なのは「彼女の視点から語らせる」ことで、映画という形式がその方法にふさわしいメディアであると確信した上でそれを実行している(それを論理的に導いた軌跡は、確かに作品の中に見てとれる)。

「彼女の存在」が『彼女の不在』を強調するといった構造が、人生の肯定を妨げる、というカオスな状況が、意外にもスマートかつ論理的に表現されているのは驚いた。
『メタ「メタ映画」』という設定が非常に効果的に使われている点と、それでしか表現し得ない世界として描き切った点で、本当に良い作品だったと思う。論理的に隙を作らない作風も良い。
「この映画の解釈はあなたに委ねます」とかいう無責任極まりない作品が多い中、問題提起とその解決を理路整然と行う本作のような作品に惹かれる(最近は、エゴと自己満足を混同した作品に出くわすことが多く、辟易している)。アピチャッポンが推薦しているのは、単に制作に関わったからという理由のみでなく、アピチャッポン的な問題解決がなされているためではないかと個人的に思う。

気になる点としては、監督はもう少し観客に親切にする必要があるとも感じた。アピチャッポンのように、人間ではない対象を活用する余裕を持っていれば更に良かった。