さくらけ

リズと青い鳥のさくらけのネタバレレビュー・内容・結末

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

怖いし痛いし苦しい話。
ここまで思春期の感情を繊細に、本当に繊細に描いている作品はなかなかないんじゃないでしょうか。演奏シーンも素晴らしい。みぞれちゃんの演奏が常軌を逸しているんだな、とわからせられる音と演出。知らず知らずのうちに涙が出てきました。
数年前に見たときは希美のことを好きになれなかったんですが、今見ると逆。希美にどうしても感情移入してしまう。私も凡人だから。
最後の最後まで希美とみぞれはすれ違っている印象だったし、お互いそれを知った上で一緒にいるんだなあ。バッドエンドではないけれど、ハッピーエンドとは言い切れないよね、という。

本編以上に希美にとってみぞれは“たくさんいる友人のひとり”なんだなあ、というのをひしひしと感じてしまいました。でもみぞれにとっては違う。希美がみぞれにとっての全てで、でも希美にとって自分がたったひとりの特別じゃないことも感じていて、そのことに苦しさを抱いている。
でも希美からしたらそんな激重感情向けられても戸惑ってしまうだけなんですよねえ。つらい。

改めて見ると希美の人間らしさに共感しまくってしまいました。
自分の方が音楽が好きで、なのにみぞれの方が才能があって、それに嫉妬しているからこそデリカシーのない行動を取ってしまうんじゃないかなあ。
ある程度自覚がある上での諸々の行動や態度なんじゃないですかね…あくまで私の所感ですが。後ろめたい、というか若干の気後れをしてるのかなあ、と。
それでも希美は悪い子ではないからみぞれを完全に拒否することはできない。

みぞれの圧倒的な演奏を聴いたあとの二人の対峙シーンはあまりにもすれ違いすぎていて本当に心が苦しくなりました。
そりゃ希美だって、みぞれの演奏に圧倒されて完全に負けて心が折れたときに当の本人から「泣いてるの?」なんて言われたら嫌味の一つや二つや三つ言いたくなりますよ。
とにかく希美に想いを伝えよう伝えようと必死になるみぞれと、そんなみぞれに戸惑う希美。お互い自分のことしか見えてないんですよね。特にみぞれ。

それでも希美は悪い子ではないから、自分で気持ちに整理をつけて、みぞれと表面上は今まで通り付き合っていく。
「みぞれのオーボエが好き」
希美からもらったたったこの一言を大事に抱えながら、みぞれはこれからもオーボエを吹き続けるんだろうな。
さくらけ

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