ヒロ

スーパーシチズン 超級大国民のヒロのレビュー・感想・評価

3.7
二・二八事件を発端として始まった蒋介石率いる国民党政府による反体制派の政治的弾圧白色テロの被害者であるお爺さんの贖罪の旅を描いた作品なのだが、回想シーンに出てくる世界仰天やアンビリーバボー辺りの安っぽい再現ドラマもどきの残念さや、台湾ニューシネマにしては説明過多なモノローグにこれじゃない感を感じつつ、序盤に流れる軍艦マーチに脳内で加東大介をディゾルブさせ岩下志麻を送り出しひとりトリスバーで酒を飲む笠智衆の哀愁を思い出して泣きかけたり、効果的に用いられてるショパンのノクターンに眠らされそうになったり、紆余曲折を経てお待たせしましたと言わんばかりの超越神構図のラストの墓参り。竹藪を見上げるカメラの視点は徐々にパンダウンされ無数の蝋燭に灯る明かりを捉える、三十余年振り自らの護身のために売り払った友の命に向き合う老人が掛けた言葉が“すいません”。自分の人生すべてを狂わせ、その失われかけた人生も終わろうとする直前に不意に出てきた言葉が日本語という悲しさ。一日本人として複雑な感情が生まれたと同時に、このシーンだけで観にくる価値があったと納得させられた。台湾ニューシネマの旗手エドワードヤン、ホウシャオシェン、ツァイミンリャンには及ばないが観る価値は大いにある。侯孝賢のベスト『非情城市』を観ておくと入りやすい。

【台湾巨匠傑作選2018】
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