エアール

レプリカズのエアールのレビュー・感想・評価

レプリカズ(2018年製作の映画)
3.5
心肺機能が停止し死んでしまったとしても
その遺体から神経情報を入手することは可能である。
脳から”それ”を取り出して
別の合成脳にインプリントする。
意識の転送、すなわち人間の心を複製すること。
もしこの研究が成功し、精度を高めることができたら…

戦地へ送られる兵士や事故の犠牲者、
認知症患者の延命など
応用次第でその可能性は未知数…
バイオナイン産業で神経科学者として
研究所に勤めるウィリアム博士は
人間の意識をコンピューターに移す実験を行なっており、
快挙達成まであと1歩のところまで迫っている。
ネズミや猿など、動物の意識転送は成功しているのに
被験体が人間となると
どうしても躓いてしまう壁があるだ。

上層部より
今回の被験者で成功しなければ
研究所自体の閉鎖を言い渡されてしまう。
成功を妨げている原因がなんなのか、
一刻も早く解明し対処しなければならない。

そんな矢先
週末家族で船旅へ出かけてのんびり過ごそうと計画していたウィリアム。
美しい妻のモリーや愛しい子どもたち、ソフィー、マット、ゾーイらを車に乗せ
船が停泊している港まで走らせていると、
雨による視界不良と突風に見舞われ事故を起こしてしまう。
ウィリアム自身は軽症で済んだものの
モリーや子どもたちはその事故で
全員命を落としてしまう。

突然の事故で家族4人を失ってしまった男は
押し寄せる悲しみと絶望に苦しむ中で
タブーを犯す決断をするのであった、
家族の身体をクローン化し、
その身体に意識を移し替え、
完璧な複製=レプリカとして甦らせることを…


善悪の判断よりも失くした家族のことを優先し禁断の領域へと踏み込んでしまうひとりの科学者の暴走と葛藤を描いてみせた本作。
”甦り”と”クローン化”はよくよく結びつけられる言葉でもありますし、
倫理や道徳についても考えさせられる
有効なテーマのひとつとして
よく語られる内容ですね。

死なせてしまった家族を甦らせるため
クローンを作製するのに必要となるポッドやほか機材を
会社に無断で拝借し自宅の地下室へと運び込み
職場の同僚であるエドも巻き込んで
いよいよクローン化を実施。
しかしやるべきことは山積みだし、問題や試練が次から次へとウィリアムの前に立ちはだかる。

神経情報の抽出、遺体の処理、
必要となるポッドは4つに対し用意できるのは3つまで、
取捨選択と埋め込む神経情報の操作、
クローン作製の鍵を握るのは
コンピューターの画面上に表示されるパラメータの均衡であり
このバランスが少しでも崩れると異形となるリスクが高まる、
膨大、かつ安定した電源供給、
妻の職場や子どもたちが通う学校など関係各所への根回し、
クローン化に成功し器となる身体が完全な状態でできたとして
未だ成功例がない人間へのインプラントをどうやって成功させるのか、
失敗は許されずチャンスは1回きり、など…

追い込まれた状況下で
発見したひとつの事実から
結果的に複製に成功するウィリアム。
こうしてまた家族と幸せな日々を過ごそうとするも
妻や子どもたちの中で膨れ上がる違和感や度々必要となるメンテナンス、
研究所で実施している研究の方ももう後がないため
もし閉鎖なんてことになれば
機材を盗んだことがバレて
刑務所送りは免れないし、加えて賠償問題に発展する可能性も、
更にここにきて
ウィリアムが在籍するバイオナインは
単なる医療会社ではなく
政府も絡むヤバい組織であることが判明する、
妻や子どもたちが人類初となるクローンであることも知られてしまい
組織の所有物であるという言い分のもと
サンプル回収のために奪いに掛かる屈強な野郎どもとの闘い…


ってなわけで
後半はちょっぴりアクション色も出てきちゃったり、笑
出演してるキアヌですが
本作では出演の他、製作にも参加してるとあって
力の入れようが見えますね。

”死者を甦らせる”という
自然の摂理とは逆を辿る形になりますが、
本作のようにサイエンスと絡めてSFジャンルで描いてみせたり、
スティーヴン・キング原作の”ペット・セメタリー”のように
自然の中で生まれた超常的なパワーの作用により実現したあとをホラータッチで描いてみたり、
いずれにしても
大切な人を突然失ってしまった現実を受け入れられず
異なるアプローチでもって”甦らせる”という選択肢を選んだ人たちの
家族に対する普遍的な愛とそこに潜む脆さや危うさが垣間見える作品となってますね。

個人的には好きなテーマですし
考えさせられる部分も多いので
ついつい観てしまう傾向にあるストーリーであることに
違いありません。

本作については
終盤で組織の襲撃がありまして
家族で一致団結して連中の魔の手から逃げることになり
結果ウィリアムにとっては良い形で終わりをむかえる内容となってしました。
でももし組織のことがなかったら
きっと違った結末をむかえていたかもしれませんね。
エアール

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