予告編を見ずに見てよかった。これは誰もが見るべきだ。
以下ネタバレ
辛すぎて涙なんてでなかった。放心、絶句、衝撃。やるせない気持ちになってしまう。ホットショットと呼ばれる山火事にあたる消防団員20人の話で、山火事を鎮火するためにはクワで溝をほり防火帯を作ったり、自らの手で火をつけ、予め燃やしておき火を食い止めるといった方法が取られる。なので農務省の特殊チームだけが現場の権限を持つホットショットになる。ところがこの20人はエリートではなくアメリカ史上初の地方自治体からホットショットになった人達だった。そんな彼ら、主にその隊長とヤク中で刑務所にも入っていた生粋のクズの隊員のふたりを中心に、消防団の活動と共に物語が進んでいく。
火の恐ろしさ、仕事の過酷さ、それぞれの家族の問題などにもちゃんと焦点を当てていて、最後の悲劇を受けた遺された全員の悲しみが分かり、非常に辛い。
マクドナウは序盤はクズで、周りの人達も彼をクズ呼ばわりしていて(最初だけで途中からは心を通わせた親友に20人全員がなっていく)、娘が出来たことにより改心し、真面目な消防団員に成長していく。そんな中で生き残るのは彼一人。
亡くなった19人の家族達が中学校に集められ、自分の夫が唯一の生き残りかもしれないと希望を胸に悲しみに暮れている中、そこに現れたマクドナウ。それを見て絶望する19人の家族たち。
当然彼は自分だけが生き残ったことを責める。彼自身クズ野郎だった事実があるので、そう思ってしまうことに理解出来るし、改心し立派な男になっていることも知っているのでそんな自分を責めないでと悲しくなる。もうただただ辛いし、彼らを誇りに思う。
この映画を見る前から、山火事を題材にした映画の時点で人が焼け焦げて死ぬという想定はしていた。冒頭のクズなシーンからマクドナウが死に、唯一彼の成長を知っている他の19人が追悼するという展開を何となく想定していた。しかし全くの逆で唯一彼が生き残る。そんなことってあるのか。マクドナウと同じ気持ちに立たされる構成になっていて実話を元にしているだけでなく単純に話もよくできている。えげつない。
悲劇が発覚するシーンの焼け野原の描写、19個の焼け焦げた形のない防火テント、惨すぎる。そういう描写をしっかりと写していることに意味があるし、衝撃も増す。
山火事の原因の大半は人為的なもの。僕自身気をつけなければならないし、この映画を見て気をつけて欲しい。
面白さと教訓を両立して傑作。