この先の人生、これより面白い映画に出会える気がしない。
見てない方へ、語り継がれる大傑作なのでいつか必ず見る機会が来ます。無駄なネタバレを耳にする前に、早く劇場へ行ってください。
ジャンルとしては要はコメディ。最初から最後までめちゃくちゃ笑えます。「ゾンビはちょっと…」とか思う必要は全くありません。怖くもグロくもないです。
しかも下に詳しく書きますが、ただのアホ映画ではなく、映画づくりへの執念と愛を存分に感じられる作品でもあります。ゴタクはこれくらいにして、騙されたと思って見てくだせえ…。
▼▼以下ネタバレ含みます▼▼
とにかくまず前半部分がもうめちゃくちゃ面白い。あのワンカットのショートムービーだけで「あー楽しかった」って満足して劇場を後にできるレベル。フルメタルジャケットの前半部分並みに面白い。
後半が始まって「逆にここからどう面白くできるよ…」と不安になったけど、そんな心配は一切いらなかったね。あれ単体で面白かった前半が、全て伏線として回収される斬新さ。
たしかに手持ちカメラでズームインアウトしまくるのとか、ラストでカメラが持ち上がるのとか印象的だったもんね。まさかカメラワークまで全部伏線だとは。
一見すると頭空っぽにしてゲラゲラ笑えるだけの映画に見えるんだけど、よくよく考えると、映画に対する底知れない情熱と執念を感じる映画だった。
まず、よく見ると今敏も頭を抱えるほどの多重入れ子構造(ゾンビ映画を撮る撮影チームを撮る撮影チームを撮る撮影チーム)になっている面白さ。
カメラワークを伏線に使う仕掛けも、普段から映画づくりのことをめちゃくちゃ考えている人(カメラワークを常に意識しながら映画を見ている人)じゃないと思いつかない。
そして言うまでもなく、無名の役者、無名の監督、そして低予算の中で、あの複雑で長いワンカットを撮りきる技術力。あれを撮るのに何カット試したんだろう。予算の中で撮影場所を借りられる時間も限られていたはず。膨大な練習量と執念を感じる。
そして何よりすごいのは、そういった影の努力とか構成の小難しさとかを一切感じさせず、観客を楽しませるエンターテイメント作品に徹しているところ。
これだけ技巧的で芸術的な側面を多分に含みながら、「良い映画は観客にとってすべからく娯楽的であるべき」と言わんばかりの信念が伝わってくる。
そしてきっと観客はこの映画を見た後、次に別の映画を見るとき、無意識にカメラワークを気にしてしまう。撮影の裏側を気にしてしまう。「これはどうやって撮ったんだろう」「このカットの長さにはどんな意味があるんだろう」と思わずにいられなくなる。
そこまで映画を見ながら考えられたら、きっともっと映画鑑賞は面白くなる。考えすぎかもしれないけど、この映画には観客に「もっと映画は面白いんだぞ!」ということを伝える意図があるような気がしてならない。
これもクラウドファンディングで作ったらしいんだけど、「執念と愛(そして映画ファンからのちょっとの支援)があれば面白い映画はいくらでも作れるんだぞ!」いうアツいメッセージも感じました。
ちなみにちなむと、アシスタント役のG田さんはうちの会社の同期で、いま同じオフィスで働いております。明日出社したらサインをもらいたいと思います。