湯っ子

ファントム・スレッドの湯っ子のレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.5
1950年代のロンドンが舞台。有名なオートクチュールの仕立て屋レイノルズと、彼のミューズとなった若きウェイトレス、アルマの愛の物語です。
とは言っても、一筋縄でいかないのがこの作品。
うっとりするようなドレス、華やかな社交界、さざなみのようなピアノ曲。
美しいものばかりで綴られる物語は、恋愛における複雑なパワーゲームと、その果て。
これを禁断の愛と呼ぶのか、それとも純愛と呼ぶのか…
「彼に恋をすることで、人生は謎じゃなくなるのよ」
ラスト近くのアルマの台詞が、そのもの謎のようです。

やはりこの監督らしく、難解な作品で、初見はただ驚きのみ。二周目に涙が溢れました。
解説を読んだり、自分で色々と考察するほどに味わい深くなる作品です。
それほど、ひとつひとつのシーンにたくさんの意味、情報が込められている。
今も、アルマが食事中に2人分の水を注ぐシーンを見返しています。
その水の量、レイノルズがどちらのコップを手に取るか…

この映画は、観る人によっては長くて退屈かもしれませんが、私にとってはたくさんの謎解きのある映画となりました。

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」同様、ジョニー・グリーンウッドが音楽を担当しています。
彼の音楽が、恐ろしく、美しく、もの哀しい世界を構築する重要な役割を担っています。

私はこの愛の形を否定できない。
湯っ子

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