車を飛ばして会いに行くその跳ねるような高揚感。ただ食事を注文するやりとりだけで感じる愛情。そして採寸という行為の美と厳格さ。3人というバランスのスリル。一着のドレスに隠匿された想い。
ストーリーは思わぬ方向に変化して行くのですが、わたしはただクチュールの仕事と愛の始まりと終わりがあるだけでよかったのにな、とつい思いました。彼のあんな甘い顔初めて観た。
クロード・ルルーシュの「男と女」や「ランデヴー」をつい想起しながら観ていました。
再見
ドビュッシーとラフマニノフが交わったような大きな和音だけど軽やかな光の煌き。ドレスを引き渡す朝が来て、ハウスの窓を開ける。お客様を迎え入れるまでのその毎日の完璧な仕事。その美しさ。光の粒子を感じさせるその手触りがなんて!そして彼女と初めて出会うレストランのシーンのなんて甘い奇跡みたいな瞬間。
それは一瞬で消え去ってしまうものだけれど、
母の亡霊と共にある彼のドレス。芯に込められたその想い。死を傍に感じその死に見守られるだけでなく死を招き入れる。手で顔を包むそれは洗礼者ヨハネの首を抱く恍惚のサロメ。