キャッチ30

ファントム・スレッドのキャッチ30のレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.5
関連作でいうと、デヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』に近い。男と女の支配関係の逆転。ポール・トーマス・アンダーソンはこの設定を実体験を絡まえながら挑んでいる。

舞台は1950年代のロンドン。上流階級の間では著名なオートクチュールの仕立て屋レイノルズ。彼は厳格で病的に仕事熱心である一方、亡き母の面影に囚われている。別荘に向かう海岸のレストランで彼はウェイトレスのアルマと出会う。レイノルズはアルマの完璧な身体を愛するが、アルマはレイノルズの心を求める。

物語はこのシーソーゲームの繰り返しである。レイノルズは持ち前の気難しさとプライドの高さからアルマを支配しようとするが、アルマも負けてはいない。毒と母性を持って彼の心を掴もうとするからだ。飴と鞭の使い分けと言ったら良いだろうか。
アルマを演じるヴィッキー・クリープスは決して美人とは言い難いが、華奢でスタイルが良い。また、表情の奥に芯の強さと野心を潜ませている。加えて、嫉妬と独占欲も兼ね備えいる。

もう一つ話題になったのがレイノルズを演じるダニエル・デイ=ルイスの引退宣言だ。レイノルズの役柄は徹底的な役作りで知られるデイ=ルイスと重なって見える。彼の引退理由は役に入り込みすぎた為となっているが、役が抜ければ映画界に戻ってくるに違いない。