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日日是好日のeulogist2001のレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.0
一般に「娯楽」には「非日常」を求め、普段とは違うなにかしらを体験し、どきどきやワクワクを味わうことに主眼が置かれる。そしてまたいつもの「日常」に戻っていく。
それが「楽しむ(愉しむ)」ということだと思っている。

本作は「非日常」空間である映画館の中で、改めて日々の「日常」を味あわせ、気づかせてくれる。それは毎日の食事のひとときであり、親や友人とのたわいない会話であり、季節のうつろいの中での気づき、その中に垣間見える瞬間瞬間の美しさ、尊さであり、「今ここ」に耳を澄まし、目を凝らすことの大切さ。そして作中ではその典型として一定の「型(所作)」を守ることを良しとする「茶道」のおけいこが物語のアンカリングとして機能する。

また、F・フェリーニの名作「道」を介して幾度となく比喩的に語られるのは、「受け手」側の問題である。目の前にどんなにすばらしいものを見ていても、それを受け止める目線や度量、経験やスキルがなければ理解できない。けして感覚的な「感受性」のみでは実感できない素晴らしさ。

典子と武田のおばさんとの「茶道」のおけいこの24年を通して描かれるのは、生きていく「道」筋であり、時間を掛けることや繰り返すこと(日常)の中でこそしか見えてこないものへの共感と余韻である。
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