ノラネコの呑んで観るシネマ

日日是好日のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.7
雨音が心にしみる。
「毎日が良い日」ってプーさんも言っていたけど、本当はどういう意味なのか?
これは、黒木華演じる何となく生きている大学生が、樹木希林の茶道の先生と出会い、茶の湯の哲学を通してこの言葉に秘められたディープな意味を知る、25年に渡る物語。
何が特別なことが起こる訳でもなく、映画は茶の湯の二十四節気を毎年巡ってゆく。
そして主人公は徐々に理解する。
茶道はなぜ“型”が重要なのか。
同じことを忠実に繰り返しても、天気は違うし歳もとる。
変わらない茶の作法と相対化されることで、世界はどんどん移ろってゆく。
毎日が一期一会だからこそ、この世界は素晴らしい。
なかなか見えてこない茶道の核心への旅を、フェリーニの「道」の理解に例えるのは、原作由来なんだろうか。
そして、数百年継承されて来た茶道の歴史は、この作品において、日本映画の継承のメタファーとなった。
樹木希林が亡くなったことは哀しいけど、演技派女優の系譜は、本作でも素晴らしい好演を見せる、黒木華や多部未華子に受け継がれてゆくだろう。
大森立嗣監督作品としても、ベストな仕上がり。
しかし大杉漣と樹木希林がもう見られないなんて、ホント寂しいなあ。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1187.html