このレビューはネタバレを含みます
同名小説を読み始めて、お茶の複雑な作法が文字からは入りづらかったので、この作品を手に取りました。
古き良き日本の伝統。どれだけ世の中の流れが慌ただしく、目まぐるしく変化しようとも、いつも時間の流れは穏やかで。当たり前のことを当たり前に、正しく行う。
常に目の前のことに集中して、茶器や季節の茶菓子、掛け軸等を目で楽しみ、雨や風、鳥の声等を耳で楽しむ。次第に心の感じ方が違ってくることに気づき、五感を使い、味わう喜びを知る。
茶室から見える庭の緑や、雨模様等、映像もとても美しく、画面から聴こえてくる自然音も洗練されていて、典子が目を閉じて五感を研ぎ澄ましている場面では、私も自然と同じようにしていました。
『一期一会』
「人生に起こるできごとは、いつでも「突然」だった。昔も今も...。
もしも、前もってわかっていたとしても、人は、本当にそうなるまで、何も心の準備なんかできないのだ。結局は、初めての感情に触れてうろたえ、悲しむことしかできない。そして、そうなって初めて、自分が失ったものは何だったのかに気づくのだ。...........いつだって、本当にそうなるまで、心の準備なんかできず、そして、あとは時間をかけて少しずつ、その悲しみに慣れていくしかない人間に...。
幸せな時は、その幸せを抱きしめて、百パーセントかみしめる。それがたぶん、人間にできる、あらんかぎりのことなのだ。
だから、だいじな人に会えたら、共に食べ、共に生き、だんらんをかみしめる。
一期一会とは、そういうことなんだ...。」
他にも心に染み入る言葉や場面が至る所に散りばめられていましたが、『一期一会』のシーンのように、人生で本質的な、より大切なことに気づくために、私はこの作品に出逢ったような気がします。
今の私にとって、出逢うべくして出逢った、今観るべき作品でした。
「何だか最近呼吸が浅いな..」「生き急いでいるな..」そう感じた時に見返したくなる、「今」を大切に過ごそうと思える、とても素敵な作品です。