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とんかつDJアゲ太郎のsomaddesignのレビュー・感想・評価

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
4.5
なんらか優勝!
2020年のなにかで優勝してる!
少なくとも劇伴は2020年ベスト!サントラ買う!!

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老舗とんかつ屋のグータラ3代目がDJを目指す

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原作未読。
映画公開に際して太田光が「とんかつDJってお前のことだろ」って伊集院光に言ってたの印象深い。


興行的にはコケてるっぽいけど、個人的には超楽しめた!
まずテンション高い北村匠海が見られるだけで徳が高い。
いつも陰鬱で腹の底を見せない、不満を抱えてても本心を言わない、淡々とした役柄が多い人の印象なのに、こんなに心情と行動が一致してるキャラを楽しそうに演じてるのが貴重。あと運動神経・リズム感が高くてビックリ!(栗原類のハイテンションぷり、変な髪型にしてもサマになるイケメンぶりもすごい)

伊勢谷友介演じるオイリーさんが、トンカツ食べてラr……おかしなテンションになるシーンが愉快。どうしたってアノ件連想しちゃう。ただでさえ自堕落で快楽主義的な生き方をしてるって役なので、なんとなくリアリティを見出してしまう。アゲ太郎と出会うことで、自覚的に大人として先輩として誇れる人になろうとするトコは涙出そう。

個人的に滋賀が生んだスター、ニャンコ祭りでお馴染み桐畑トール先生が、野次馬役で一瞬登場したのが嬉しかった。祭りだ!祭りだ!

全体的にサブカル臭が薄くて、普遍的な青春映画に昇華しようとしてるのも志高い。モテやウケが出発点になって、バンドを始めるのはいつの時代も一緒。恋や挫折を通じて、自分のひとりよがりや幼稚さに気づいて、自覚的に大人へと脱皮していく青春映画の王道。
ボンクラ仲間たちの友情の物語でもあって、彼らも自身の幼稚さに気づいて出来ること/やらなきゃいけないことを見出してく展開が熱い。

欲を言えば彼らが働いてる姿が全然見えなくて、日々の仕事や暮らしをどう思ってるのか描いて欲しかった。クラブや音楽活動に何を求めているのか分からない。理屈抜きで楽しいから続けたいのか、結局モテの手段でしかないのか、辛い平日を忘れるための逃げ場なのか?(アゲ太郎は仕事とDJに共通点を見出して、日々を充実させてたけど)

なんなら一番自堕落だと思ってたオイリーさんが一番働いてて、好きな事はカネにならない、生きる難しさを体現してるみたい。

劇伴が超豪華で、Shingo Suzuki・mabanua・関口シンゴ・kan sanoらorigami Productionsの面々に加えてBEMANIシリーズで知られる黒光雄輝。アゲ太郎のターニングポイントになる曲「Juicy & Crispy」の70年代レアグルーヴ感。フツーに名曲で、てっきり既存の曲かと思うほど。クライマックスの「とんかつアンセム」もSTUTSみたいで超カッコよかった!(三代目道玄坂Bro.のラップがあんまり上手くないのも、ダサカッコよくて好き!)

クラブシーンの選曲が絶妙に古いのも良かった。オイリーさんのレコードを使ってるせいもあるけど、それなら24歳の若手DJがUSBからケミカル兄弟の2003年の曲をそのままかけるってあり得るんだろうか?
ことほど左様に全体的に漂うダサさが本作のミソ。舞台が00年代ならまだしも2020年代の若者文化には到底見えない。このズル剥けない半剥けのダサさを微笑ましいと思えるか、否かで楽しめるかどうか分かれそう。

結局アゲ太郎が全然DJしてない問題。クライマックスにしてもライブパフォーマンスだし。大会規定があるなら早々に失格なような💧 だとするとアイツが途中乱入してくるのも納得で、競技大会としての盛り上がりより、その場のお客さんをアゲるのを優先したのかも。それにしたって、他人のライブにしたり顔で乱入って、かなり頭おかしいけど。


ツッコミポイントもいっぱいあるけど、自分にはこの幼稚な暴走っぷりとダサさが、エネルギーに思えてとても楽しめた。初期衝動を思い出させてくれる。元気でた!
見終わってスグ、映画館から一番近くて(できれば美味しい)とんかつ屋を検索しちゃうってだけでも成功なのでわ。とんかつ食べたい。

公開直前になって何度も映画にとって不幸が続いてしまったけど、不遇に負けずにヒットして欲しい。頑張れ二宮監督!!

60本目
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