黒猫式

ブレッドウィナー/生きのびるためにの黒猫式のレビュー・感想・評価

4.0
Blu-rayにて鑑賞。
原作未読。
タリバン政権下のアフガニスタンにおける女性蔑視問題にフォーカスしたアニメ映画。

ソ連の侵攻を退けた後は内戦が続き結果的にアフガニスタンの先鋭化された国粋主義者というべきタリバンが統治することになり、イスラム法の厳格化の中で女性の社会的権利の制限が顕著となった中で父親が投獄されてしまった家族の為に男性の振りをして生活物資を調達する稼ぎ頭(ブレッドウィナー・英語慣用句)になり゙、父親を救出することを決意する11才の少女パヴァーナの物語。

日に日に困窮していく中で無言でハサミを手にして鏡の前で長髪を切り落とし、これまた無言でお姉さんが断髪を手伝うシーンの淡々とした感じが正に生きるための手段というのが明確に伝わってくる。

少女が買出しに来ても誰も相手にしてくれなかったのが短髪にして男装するだけで皆ニコニコ相手をしてくれるのがやるせない。

また作中劇の様な形式で描かれる彼女が家族や自分自身に伝えるように紡がれる「物語」も映画の進行とともに真意が解りグッときます。

そんな中で、手紙の代読をすることでタリバン構成員と交流することになる描写もあることは興味深い。

作中ににも米軍侵攻の気配が濃厚になっていくことでタリバンにも混乱がみられるようになり、上記の構成員の手助けもあり父親(かなり衰弱している描写)の救出に成功するも家族は離散した状況で物語は終る。

現在のアフガニスタンにおいても米軍の介入は結局のところタリバン政権を打倒してもタリバン勢力自体は国民に支持されているのか再び拡大傾向にあり、現行政権においてもイスラム法の厳格化は止まっていないのが現状。
個人的には、志半ばで事故的な凶弾に倒れてしまった中村哲医師が進めていたような感慨事業の民間支援を絶やさないようにするアプローチこそが必要では無いだろうかぐらいしか考えつかない。

ソ連・アメリカという2大大国の軍隊にも膝を屈しなかった不屈の精神性が、強兵だけでなく富国にフォーカスしてくれればと願うばかりである。
黒猫式

黒猫式