ダジャレマスター

恋は雨上がりのようにのダジャレマスターのネタバレレビュー・内容・結末

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『人生の雨宿りの物語』という説明文通りのストーリー。陸上を諦めた主人公あきらと、執筆活動を諦めた近藤。近藤があきらに放った「諦めてしまったらそこで立ち止まったまま(意訳)」という台詞は、近藤自身に向けたものでもあったのだろう。近藤の旧友・ちひろの「諦めてその気持ちを引きずることを未練、しかしそれでも前に進もうと足掻くことを執着と呼ぶ(意訳)」という台詞など、物語全体のメインテーマが『諦めずに前進』だと私は感じた。陸上と執筆活動、短い期間で見れば諦めたことだと感じても、それは長い目で見れば一度立ち止まっただけ、即ち人生の雨宿りをしただけで、雨(挫折や諦め)が止んだらまた前に進む。人はそうした雨宿りの繰り返しで人生を全うするのだろう。

続けてサブテーマは『恋愛』だと感じた。あきら(17歳)と近藤(45歳)の恋愛模様からは、やはりお互いの歳の差ゆえの恋愛観のギャップが感じられた。あきらは、近藤が修飾した言葉の通り希望に満ち溢れていて真っ直ぐでキラキラしている高校生。比べて近藤は、夢を諦めたバツイチ子持ちの45歳で、自身を空っぽのおっさんだと自虐している。近藤に真っ直ぐ自分の想いをぶつけるあきらの恋心は透き通るほど純粋で眩しい、しかしそこに責任なんてなく、あるのはただただ「好き」という溢れる感情だけ。冒頭のニュースの描写の通り、45歳の近藤がその想いに応えるのには責任がいる。社会的な立場、年齢、全てが違う2人の間にはどうしても恋愛をする上で責任感のギャップが生まれてしまう。今回あきらの想いは成就せず、美しい思い出として終わった。劇中で近藤があきらに告げた「君と一緒にいると忘れていた大切な気持ち=財産を思い出すんだ。そしてこの財産は、大人になっても決して忘れることはないかけがえのないもの(意訳)」という言葉は個人的には名言だった。その財産こそが、雨を上らせ、人を前に進ませる原動力となるからだ。