ルサチマ

息衝くのルサチマのレビュー・感想・評価

息衝く(2017年製作の映画)
4.2
宗教二世問題、統一教会の問題が取り上げられる昨今において2017年に提示された今作は「いかに語るか」ばかり言及される映画作品とは明らかに異なる質感を持ち、「何を語るか」という核に目を背けることなく徹底的に作ろうとする気概を感じる。勿論、本質的には「何を語るか」という問題は「いかに語るか」という問題と連動しているが、「何を語るか」という核をなしに演出方ばかり目を向けてる演出家や作家とは、木村文洋という映画監督は明らかに異なる次元にいる。終盤カリスマとの再会で残酷にも省略される夕餉。長年越しの議論に取っ組みあいつつも、道化的に振る舞うカリスマの存在が、かつての子供達へつかの間のボール遊びや餅つきで停滞を延(伸)ばしていく。欲を言えばそうした豊かさをもっと見ていたいのだが、やはり此処で描かれるべきはカリスマを失って10年もの月日を経た主人公と幼馴染がカリスマを喪失した後の教団の在り方を問うことであったとも思う。今作のパンフレットに寄稿している鎌田哲哉が執筆した「木村文洋のりんご」というエッセイ/批評は、映画と同等かもしくはそれ以上に強烈な生命の温かさを呼び起こしてくれるテクストでもあり、映画の記憶とともに何度も反芻したい。
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