ミサホ

工作 黒金星と呼ばれた男のミサホのレビュー・感想・評価

工作 黒金星と呼ばれた男(2018年製作の映画)
4.3
スパイを扱った作品は、地味で静かであるほど、その本質が伝わってくるようで良い。この作品は実話ベースだが、北と南の緊張状態がイヤというほど伝わってきた。

ここまで成功したスパイは、東ドイツのギュンターギョームとこの作品の主人公くらいだろうか。(知らんけど)

ファン・ジョンミンの好演はさすが。
彼が演じる韓国のスパイは、数年かけて、さらには破産してまで、これまでの素性を隠し、商売人としていよいよ北に潜入する。

そこで、イ・ソンミン演じる高官と出会う。イ・ソンミンのこの作品での素晴らしさは言うまでもないが、彼の部下を演じたチュ・ジフンも良かった。

金正日も本人かと思うほどそっくりで、製作側の本気度が伝わってきた。随所に北の非情さや人民の生活の一片なんかも描かれていた。

ラストは、イ・ソンミンが演じる高官との秘められた友情にグッときた。ふたりの表情がなんとも彼らの信頼の度合いを物語っていた。

スパイというのは不思議な職業で、相手の懐に入る人懐っこさが必要とされる反面、それを裏切る冷徹さ、任務を遂行する冷静さと知性も欠かせない。しかし、スパイも人間。様々な感情と向き合いながら、どこかこの黒金星のように人間らしさを失わずにいたいと密かに願っているのだろうか。


兎にも角にも素晴らしい作品だった。
間違いなく高品質の作品だった。
ミサホ

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