ファンジョンミン、最高。
どっか抜けてる感じがするけど、それは逆に彼の交渉における武器であり、北に進出するビジネスマンを装って北の幹部とパイプを作り、核に関する機密情報を突き止める工作員。
北の不穏な武力的な動きを背景に、水面下では情報戦。北も南や中国の動向が知りたいのは同じで、すり寄ってくる彼から逆に情報を欲したり、二重スパイに勧誘してくる。
ただでさえこっちもあっちもここかしこも疑心暗鬼な空気が立ち込め、抜き差しならぬ命の危険と緊張感の中、相手の魂胆の探り合いの連続。
それでも真相を探るため、どんどん北側の幹部に接触することを掴み取り、よもや北の頂点、例の総書記にまで辿り着く、、、。
この総書記、、、スゴいな。
いろいろ大丈夫なのか、心配になる程、ガッツリ描く。
北とビジネスしたいとウロウロして、怪しまれながらも確実に北の核心に迫っていく。このキモの座り方、恐るべし。
なかなかこんな役をこの感じで演じきれる役者はいない。ファンジョンミン、最高。
この緊張感。
飄々と冗談と嘘で取り繕いながら、北の重鎮に接近しては、毎回それなりに成果を挙げ、グイグイ確信に迫る。
彼の暗躍が表では“北と南の共同広告制作事業”にまで発展。その裏で動く政治と金と情報戦。
組織の最前線として送り込まれるも、危うくなればすぐさま切られかねない命綱。
一手間違えれば北からも南からも抹消される危うい任務。
資本主義と共産主義の国と国の鍔迫り合い。
指示に従い、いつだって危ない橋を渡り続け、鉄壁の北の懐に飛び込み、地盤を作る。
しかし、それも自分の組織の中での方向性の相違から摩擦があったり、逆に相手側に理解者ができたり。
北の核保有の真実、韓国の大統領選の裏側で動く北の影響力。
政治と金、そこにある南北の見えざる情報線とサスペンス、そして、北と南の人間ドラマ。
めちゃくちゃ骨太な政治サスペンス。
これが実話ベース。90年代に“黒金星”と呼ばれた伝説の工作員の話だが、それを今そこまで古びてない話をここまでガッツリ描いて大丈夫なのか。
北と南の殺伐とした情報戦の中、疑心暗鬼な状況下で、芽生えた友情。そこはちょっとグッとくる。
お互いが抗えない絶対的な思想の中に生きながら、お互いがお互いのために超える一線。
その一線が、例の総書記レベルの話。この映画に出てくる交渉ごとにおける緊張感は他にはなかなかない。
交渉は言いたいことを言うだけでは勝ち獲れない。しかし、相手に自分の言いたいことをそれとなく理解させ、時には嫌でも進んで相手の要望を飲み込まねばならない。
“虎穴に入らずんば虎子を得ず”
まさに、そんな映画。スゴい映画だった。
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