三条狼

プーと大人になった僕の三条狼のレビュー・感想・評価

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
3.7
朝、桜舞い散る川辺をひとり歩きながらぼうっと昔を思い出し、もう二度とあの頃には戻れないし亡くなった人々にはもう会えないのだとあらためて理解していた。そして自分が忘れてしまったかもしれないことやひとについて、少し考えていた。
その夜金曜ロードショーで本作を見てなんつータイムリーさ! と思ったし、プーさんの後ろ姿が画面に出るたび毎回なんだか泣きそうになった。
さらに風船なんてなんの役にも立たないと言われ、当たり前のように「でも持ってるだけで幸せだったよ」と返せるプーさんのつぶらな瞳に、自分が過去に置いてきたもののデカさを思い知らされた。

私が暮らす街では毎月ちょっとしたお祭りのようなものがあって、もう住んで2年以上経つというのに、つい先日になって初めて訪れてみた。
いつもは静かな地域だが、春休みの子どもたちが集まり出店が並んで、視覚的にもにぎやかになっていた。
とくに人気だったのがスマートボールの屋台で、まだあったのかと思ったし子どもがキャッキャと興じる姿が昔の自分と重なり、なんだか嬉しくなった。

私は幼少期のそうした記憶をもうすっかり失ってしまった大人だが、プーさんや100エーカーの森の面々のおかげで、いや実際にはあんな楽しい仲間たちがいなかったとしてもふとしたきっかけで、私たちはいつでもあの頃の自分を取り戻せる。

「疲れたら何もしないをするといい」。そんなのできないよって思っちゃうけど、本来そういう時間はむしろ当たり前にあるべきなんだよな。という、めちゃくちゃ現代人向けの話でした。なおストーリー展開は深く考えなくてもいいような仕立てだが、なんとなくディズニーにしては……という気がしなくもなかった。
「大人になった主人公」モノってやっぱり禁じ手なのかなー。

ちなみに英語のリスニング力を試すのにも良いかもしれない本作。副音声に字幕をつけて見ていたが、プレゼンシーンラストの社長の「あ〜」がめちゃかわいかったです。
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