CHEBUNBUN

プーと大人になった僕のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
4.0
【クリストファー・ロビン(47):運送会社カバン部門部長がパラノイアを克服するまで】
本作は、確かにホラーだった。というよりかは、社畜生活によりパラノイアに陥った中間管理職が、妄想の淵で困難を乗り越えて行く物語だった。なので、子どもが観ると「プーさん可愛い」で終わってしまうのだが、大人が観ると、涙なくして観ることができない熱い作品となっている。そして、何と言っても本作は、プーさんの怖さが最大の魅力である。クリストファー・ロビンは、寄宿舎に入る際にイマジナリーフレンドであるプーさんたちに別れを告げた。そして兵役、結婚、そして就職を経て、今や大企業の1部門の部長になった。家族を持ち、大企業で働いている彼は幸せになったか?答えはNOだ。資本主義の奴隷のように、社畜生活を強いられていたのだ(日本の社畜生活よりかはマシそうだが...)。そんな彼の生活の裏で、薄汚れたプーさんたち物語が始まるのだが、これがなかなか怖い。負のオーラを宿している、プーさんは、毎日のようにクリストファー・ロビンのアジトに行く、そしてしょんぼりして帰る。しかし、ある日、ピグレットやティガーなどといった仲間が行方不明になってしまい、途端に「クリストファー・ロビンに会いたい!」と強く願うようになるのだ。しかし、100エーカーの森からロンドンまで遠く離れている。プーさんがやって来れる訳がない!と思ったら、ドクター・ストレンジもびっくり!空間を捻じ曲げて、ロンドンにやって来てしまうのだ。そして、クリストファー・ロビンと再会するや否や、「僕は毎日《何もしない》をしているよ」「100エーカーの森へ行こう」と誘惑しまくり、彼を苦しめるのだ。心理学の言葉でいうと、防衛機制の話になっている。クリストファー・ロビンは、不満を心の奥に押し込め《抑圧》することで、自分が壊れないようにして来た。しかし、《抑圧》して来た不満が心の箱から溢れ出そうになったところに、幻覚として、かつて大切にしていたプーさんたちとの思い出がフラッシュバックする。プーさんたちによる幻影は《逃避》の道、《退行》の道という誘惑でクリストファー・ロビンが社会不適合者として道を踏み外すことを心待ちにする。その誘惑の渦の中で、いかにしてクリストファー・ロビンが自分と向き合って困難を乗り越えていくのかを本作は描いているのだ。だから、本作はただのニート推奨映画ではなかった。資本主義の波に溺れた者が、共産主義に逃避していく話でもなかったのだ。

そして、本作のラストは日本人にとってあまりに熱い!もし貴方が働いている会社がブラック企業なのであれば、きっと貴方は社長や上司にこの映画を叩きつけたくなるであろう。
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