みゅうちょび

暁に祈れのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

暁に祈れ(2017年製作の映画)
3.4
実話、本物の刑務所、本物の囚人たち。

タイでボクサーとして活躍していたビリーは薬中で捕まりタイの刑務所に収監される。言葉も分からず、白人などほとんど居ない。しかもその刑務所はタイでも劣悪な刑務所として名高い。日々死と隣り合わせのような獄中生活で、ムエタイに希望を見出していく。

ドラマ「ピーキーブラインダーズ」でいい味出してたジョー・コールが主役だったので観てみた。

極悪人が集まっているってだけで怖いのに、全く文化や言語が異なる国の刑務所に投獄されるなんてほんと怖い。

身体が重なり合う程の雑魚寝とか、ひしめき合って我先にとみずを汲むとかひ弱な物は絶対生き残れない。
ただ、ビリーは旅行者ではなくてタイで生活していて、自分の部屋もかなり汚いから、まだ耐えられたかも…?でも、屈強な男たちに立て続けにレイプされる場面を間近に見せつけられたり、レイプされた男子が翌朝には首を吊ってるのを見たり、いつ自分がそう言う立場になるか戦々恐々として日々を送らなければならないのはキツイ。

囚人たちのほとんどが、浅黒くてしかも身体中覆うほどの刺青男ばっかり!

ジョー・コールの肌の白さが眩しいわ〜!

「ミッドナイト・エクスプレス」では犯罪者である主人公がまるで被害者みたいに描かれていたけど、こちらは、自分が外国人でこんな目に遭うのは理不尽とか、そんなことは考えてもいない感じ。ミッドナイトは旅行者が投獄されるけど、こちらはタイに在住しているって言う違いはあるよね。

しかし、住んでるならもうちょっとタイ語が解ってもいいんじゃないかな…外国人(英語圏)あるある?日本に長年住んでる外国人でも日本語話さず生活してる人いてびっくりするけど…
ようやく空前の日本ブームで日本語習う人も増えてるね。

ビリーがタイ語を話せないことから、囚人たちがやんややんやと大騒ぎしてても、ビリーにはそれがなんなのか分からない。それはそれで怖いよね…なんか怒ってるけど…なんだろう…みたいな?

で、字幕の方も囚人たちのタイ語は、ほとんど訳されない。ビリーの台詞も極少ない。

そんな中で聞こえるビリーの呼吸音。

分からない言葉の嵐は、彼にとってはただの雑音でしかないし、その中でいつどうなるか分からない怖さとか、薬中の彼の頭はきっと多くを考えられる状況じゃないだろうし、そういう彼の状況が巧く表現されていて好きなタイプの映画だった。

ムエタイを始めてからも、言葉は通じないけれど、スポーツは動作やカラダで分かり合える。自分にはこれしかない!とばかりに夢中で打ち込むビリーに周囲も圧倒さる。

でも、ビリーは、ドラッグはヤメられないんよね〜。

ビリーがなぜタイに来てボクサーなのか?そういうことは全く語られないのだけれど、彼にはボクシングしかないって言うのが最初から強く描かれていて、ドラマティックな演出もなく、ただ今ある状況の中で必死に生きる彼の姿がいい!

そして彼の決断。グッと来たな…

ジョー・コールの演技いいなー!

残念だなと思うのは、この映画、描写とかはリアルなんだけど、肌の白い外国人がビリーしかいない中で、あんなに目立つ存在でありながら、あまり彼が標的にならないのがちょっと逆に不自然かな…って感じてしまった。どこまで実話かも不明だし。

あと…レディ・ボーイがもうちょっと可愛くても良かったかな…囚人の素人とは言え、歌うシーンでの歌が下手くそ…

この映画、あまり良い評判を聞いていなかったけど、わたしら好きだな。
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