「これ、プラチナチケットだから。」
そう言って彼女はポケットから本作のチケットを私に差し出した。
夏目友人帳を観るのだと心から信じていた私は、なぜコナン…?と首を傾げたが、友人の真顔を見て「これ多分、声優くるとか??」と呟いたが、彼女の耳にそんな言葉は入りもしない。なぜならそう、彼女は【安室の女】そのものだったからだ。
恋というのは人を狂わせる。
彼女はこの半年映画館に通い詰め、安室透を興行収益100億円の男にすべく、41回もこの映画を見たらしい。
おかげでトーホーシネマズのポイントは溜まりに溜まり、6回観たら1回無料になるその1回ですら、本作を観るために使った。安室の女は抜かりない。彼女は安室に釣り合う女になりたいがためにホットヨガに通い、透き通るように美しい美肌に進化していた。圧倒的に綺麗になっていた。
そして私に言うのだ。
「椅子、揺れるけど怖がらないで。
予告編のドラゴンボール・ブロリーの時がめちゃくちゃ揺れるだけで、作品の中は対して揺れないから。その後揺れるのは、心…だけだから…。」
見終わった私は、予言通りに心が揺れていた。
マツダの車に乗る男に、初めて好意を抱いた。
国産車かよ、なんて二度と言わない。人を恋に落とすドライビングテクニックに、ただただ震えた。
そのあとはもう画像検索が止まらず、次の日間髪開けずにDVDを借りて家で観た。安室の女になっていた事は言うまでもない。あの日、映画館は満席で、地味な服装の女子達が全員恋する瞳で安室透を見つめていた意味が今ならわかる。
恋だ、恋でしかない…。
名探偵コナンにこんなに夢中になる日が来るとは思っていなかったけど、めちゃくちゃ面白かった。仕事のストレスなど全て忘れて、画面の向こうの人に想いを馳せるのは本当に久しぶりだったので、女性ホルモンって操れるんだなって思いました。
女に産まれたからには見てほしい一本です。
男の人は見ても多分何にも思わないと思いますが、彼女が見たがってたら一緒に見るといいと思います。
スパダリ。ほんと、スパダリよ…。