ひのらんげ

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのひのらんげのレビュー・感想・評価

3.0
控えめに言っても、地獄の映画。

高校生になった志乃は言葉を上手に発することができない。それでも思い切って声をかけた加代と意気投合し、夏休みには2人でバンドを組み練習に励み、秋の文化祭での発表を目指す。

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「青春甘酸っぱい映画」とは程遠く、地獄の日々を過ごす少女2人。2人の地獄を説明する映画なんだと思った。前半までは。

最初に面食らったのは教室のシーン。演出とわかっているし、わかりやすく説明的にしていることはわかっているけども、こんなクソな教室はさすがにないと思う。ちょっと演出やりすぎちゃったかな。と思ったが、言いたいことはわかる。バカな大人と気持ち悪い人たち。そこは間違いなく地獄だということはよくわかった。

志乃と加代が出会って、お互い不安定な心情の波を自分で抑えきれず、混乱し、理解できず、考えがまとまらない。自分が間違っていて悪いと思っても理解ができない。つらいと思う。この描写は美しく地獄だった。

イジメとはまた違った視点から思春期の地獄を表現したことは革命的だと思うし、誰かを恨んだり人のせいにせずに、内面の問題にフォーカスしようとして、比喩なしに直接的に表現しているところは、直接私に届いて共感できるところが多かった。

もし、私が私のいつの時代にも戻れるとしても、この時代には絶対に戻りたくない。そんなことを考えさせられる、とても居心地の悪いシーンが続く。
思春期の2人は、将来二度と戻りたくないと思うくらい重要な時間を過ごしていることなんて理解するすべもない。だから余計に尊く見える。自分と照らし合わせて、尊い時間を観る映画だと思う。

汗だくで「魔法はいらない」と強がる少女の視線の先には何が見えていたんだろう。

心が乱され、ざわざわしました。

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ここで映画を終えてほしかった。

悔やまれる最後の絶叫シーン。痛恨の蛇足。
2人の高校生活は、この映画のように甘くないよと思ってしまう。それができないから辛いんじゃないか、と。一気にさめてしまいました。残念。
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