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黒い箱のアリスのtheocatsのレビュー・感想・評価

黒い箱のアリス(2017年製作の映画)
4.0
美術を嗜む者であれば見所を得やすいかも

遠くに山脈、森を奥に控えた草原に建てられた鉄とガラスでできたモダン建築。
それが父親と娘が暮らす家。
どうやら娘は事故で母親と自分の右手を失ったようで、最新テクノロジーの義手が装着され「自らの意志の力を用いて」その義手で物をつかめるよう訓練が始まる。

その二人暮らしに見知らぬ姉弟が闖入し、親子に思いもよらぬ災いが降りかかる・・・


なんて書くと単なるホラーっぽいが、そこにブラックキューブ黒い未知の箱を持ち込んだことでSF風味が加わり、珍妙な味わいとしか言いようがない感慨が生ずることになる。


建築や美術を齧った人間であればあの鉄ガラスハウスに惹かれるかもしれず、また撮影技法という点でも左右対称一点透視を多用し奥行きを演出しようと腐心していることに気づくだろう。
飾られている絵画もポロック風(もしかして本物?)他現代絵画が多数。
夜の静寂虫の声を背景音楽としてあの建築が映し出される場面はまるでモダン建築の写真集的で中々魅入られる。

でストーリーの肝となる黒い箱に関してはUFOやタイムマシーンというよりキューブリック未知との遭遇のモノリス的であり、上手く描写と活用がなされていたと個人的には感ず。
「そもそもあんなバイオレンスが絶対に起こらないよう根本的な過去の修正をすればいいんじゃないの?」と突っ込ませない最終シナリオになっていたことに少し悔しくなってしまった。

エンドロールもお洒落でちょっと嫉妬。

画像効果的にいろいろしてやられた感があり、映画総体としてもバイオレンス場面は好まないが、それが起こらないような希望を持たせるラストとなっていたので総評四つ星
※すべて解消ハッピーエンドにせずあくまで「希望」に留めたのも良し。


本物の美術館か個人宅か分からないが、あの建築を使った意義はかなり大きい。
もし普通の家だった場合、想像しただけでつまんねぇ―という感じですね。

022008
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