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響 -HIBIKI-のsuzuのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
1.0
「響」のリアリティがどこまであるかという話をしよう。今後、果たして現実世界の文学界に第2の響があらわれるのだろうかという話だ。

結論から言うとあり得ない話で、可能性から言うと今のところないに等しい。
それは、なぜか?



響は、最年少(15歳)で、直木賞と芥川賞にダブルノミネートされ、どちらの賞も取ってしまうことになるが、それは、無理である。

まず、直木賞は、「単行本になっている作品を対象」とする賞である。(日本文学振興会HPによる)響の書いた『お伽の庭』は、雑誌掲載のみで単行本化されていない。よって、直木賞の選考から、まず、はずれる。

この時点でダブルノミネートはありえない。さらに言うと、直木賞と芥川賞のダブル受賞もありえない。賞の条件に「どちらの賞も受賞していない」という規定があるからなのだ。なので、過去に芥川賞をとった作家は直木賞をとることはできない。逆もまたしかりである。

「響」は、現時点の最年少芥川賞受賞作家の綿矢りさの名前を出すなど、今の日本の文学界、出版業界とは地続きであるかようなリアリティーを出しているかように見えるが、決して地続きの話などではない。

そもそも、芥川賞は純文学対象で、直木賞は大衆文学対象となっており、賞の性格がそれぞれ異なっているのだ。(直木賞が単行本化している作品を書いた作家に送られるということは、ある程度キャリアを積んだ作家を対象としているのだろう。)

したがって、「響」は、お伽の国の話ということで、リアルな業界の内幕ものという話ではない。

感想としては、響が本棚をわざと崩すシーンは大嫌いである。本好きなのに、本を大事にしないのはどうなのかということと、私自身、本好きなので本が大事にされていないということに嫌悪感を持ったしだいである。大人にタメ口も嫌な感じだ。まあ、単に、私には合わない作品だったということだけだ。
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