ひのらんげ

響 -HIBIKI-のひのらんげのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
4.0
「二度言わせないで。この映画は面白いわよ」

小説が大好きな女子高生「響(ひびき)」。読んでいるうちに書きたくなって書いてみた1本の小説が、あれよあれよと「大人たち」にもてはやされるも、自分の考えに忠実で短絡的で社会不適合な行動で「大人たち」を困らせる。(ただし、尻拭いはきっちりやる)
まるで今死んでも良いような、あとさき考えない、目の前のスジや納得にこだわる天才のお話。

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小説は作者のものではなくて読者のもの、という考え方にハッとさせられました。そりゃそうだ。

「響」は、作品・実績・名声・財産がほしいのではなくて、「読者の心」だけがほしかったのではないか。心を震わせ読んでくれる人さえ居れば、もう作品さえもどうでも良いことなのかもしれない。心を動かす事自体に価値を見出して、その揮発性が高く儚い読書後の一時を、それだけを”全て”として捉えているのではないか。

その一時に作者の存在は関係ない、と。

でも、そのためには素晴らしい作品が必要で、天才的な作家が必要で、事務処理や、ややこしい人間関係の整理、お金の心配をしてくれる人々が関わる必要がある。これを「響」はこれから先大人になってどう解釈するのか。興味がある。
友情と嫉妬もテーマの一つかと思うけど、この機微に鈍感であるようにも思え、そんな状態でよい小説が書けるのかは疑問。

最近はSNSやYoutube等でお手軽になったとはいえ、きっとこれからもこのややこしい世界は続くんだと思う。テクノロジーが進化しても、いつまでも、いつまでも。

転じて政治家や経営者などに照らし合わせると、実績名声財産がなければ何も始められないかのような立ち居振る舞い、鶏と卵なのだろうか。日々繰り返される欲望の渦には巻き込まれたくない。やだやだ。

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良いものやホンモノを見極めるにはやはり普段からいろいろな物に触れる量が物を言うと思う。ホンモノにふれると考え方が変わる。
この映画を観て、そういう事に気づかせてくれる、貴重な時間をもらったと思っています。

おすすめ。
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