ハリィしろかわ

億男のハリィしろかわのレビュー・感想・評価

億男(2018年製作の映画)
3.9
【 シネマメモ帖 「億男」】

なんの予備知識も入れず(原作本も未読)に観に行ったら、予想外に面白かった本作。

「お金」の恐ろしさ、大金を持った人間がそのお金に振り回される滑稽さを、佐藤健・高橋一生の朝ドラコンビはじめ、曲者揃いの役者陣が熱演。
本作を観て、笑いながらも、「お金」に支配される人生の切なさを痛感させられた。

私が覚えているだけでも、以下のようなセリフが飛び交い、登場人物の善悪を問わず、各々お金にまつわる本質をついているのが興味深かった。↓

「人は「お金がほしい」と言う割には、お金の本質を全く分かろうとしない。だから、人はお金に振り回されるんだ。」

「頭に汗かいて稼いでいない金なんて、あぶく銭のようなもの。すぐに消えて、ちょうどいいんだ。」

「人は頭の中であっち行ったりこっち行ったりしている「お金」に振り回されいる。最初からそんなお金なんかないのに。」

「人は「安心」にお金を払うんだ。その「安心」の値段は人それぞれ。」

「お金からの呪縛から解放されるために「捨てた」お金を「拾う」のが私の仕事」

「人は結局、お金を「持つ」ことに安心している。」

主人公の一男(佐藤健)も、宝くじで当てた3億円があれば、なんでも問題が解決すると思い込んでいた。
しかし、その3億円を持って消えた親友 九十九(高橋一生)を追いかける中で出会った様々な人物たち、そして別居中の妻(黒木華)からの告白により、その考え方では何も問題は解決しないことに一男は気づく。

しかも、「お金がなくても幸せになれます!」とありきたりなオチがつかないところに、本作の面白さがあり、鑑賞後に「お金」についていろいろと考えさせられるのでありました。

そんなシビアな内容だけに、一男と九十九との変わらない友情物語にホロリとさせられる。
二人は大学の落研の同期という設定。
そして、九十九のお得意の噺が「芝浜」だけあって、「芝浜」の話と本作の内容が見事に同化しているところに、一男に対する九十九の想いに胸が熱くなるのでした。
お時間のある方は、本作を観る前に「芝浜」のあらすじだけでも読むことをオススメします。

九十九演じる高橋一生の熱演も素晴らしかったけど、本作一番の怪演は、怪しいマネーセミナーの教祖役の藤原竜也でしょう。
出演時間は短いけど、その分インパクト大。
〇屋仁之助あたりのマネーセミナーを完全に敵に回したかのような胡散臭さ全開の怪演、笑えます。
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