ペイン

15時17分、パリ行きのペインのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
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遂に神や仏と肩を並べる存在になってしまったのかもしれないイーストウッド監督は。

87歳にして映画というものを更新してしまったというか、どんどん監督は尖っていくというか若返ってる。半世紀以上に渡って映画界を背負ってきた男にしか撮れない、撮ることが許されない映画。

前半、中盤は事件の当事者である3人の生い立ちや日常を淡々と描いていてある種青春映画的であるが故に、そこで“退屈”と感じてしまう人がいるのもよくわかる。ただこのダラダラとしたシーンがめちゃくちゃ緻密に描かれており、このシーンが後の列車内でのシーンに驚くほど効いてきてラストには驚異的な感動をもたらしてくれる。本当に見事な構成。

本作は単に列車内でテロリストを取り押さえましたって話ではなく、誰であれ当事者のようなボンクラ男3人でもふとしたきっかけ、セリフにも出てくる“人生の導き”によって人はヒーローというものになり得るということをこの作品は突きつけている。何気ない日常や出来事にも何かしらの意味があって人は何かしらの“大きな目的”に向かっているのだと。

つまりは誰もが産まれた時から“15時17分、パリ行き”に向かっているということ。

ラストの列車内での緊迫感溢れる圧倒的な演出、演技未経験の事件当事者による演技も本当に凄まじい。

今は賛否が別れていようとも、やがて時代がこの映画に追いつく日が来るはず。あまりに革新的でヘンな映画なので採点不能(笑)
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