凛太朗

15時17分、パリ行きの凛太朗のレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.3
2015年8月15日、オランダの首都アムステルダムから、フランスの首都パリ行きの乗客554名を乗せた高速鉄道タリスの車内で発生した、イスラム過激派の男による銃乱射事件、所謂タリス銃乱射事件に対して立ち向かった若者3人にスポットを当てたクリント・イーストウッド監督による伝記映画。ラスト30分は、テロに立ち向かったスペンサー・ストーン、アンソニー・サドラー、アレク・スカラトスを本人達が演じていることもあったりで、伝記を超えてドキュメントの領域である。

上映時間94分と比較的短めの映画で、ラスト30分は置いといて、その前の1時間くらいは凄く淡々としていて、悪く言えば地味です。しかし、劇的でないからこそリアリティがあり、ラスト30分が物凄いものに見え(実際物凄いのだご)、カタルシスを得たりすることができるのだと思います。

しかしながら、個人的にはこの映画はクリント・イーストウッド監督の映画の中でも、やはり地味というか、なんか違うんじゃねーかな?っていう思いが拭えません。
主役3人のバックボーンは、短い間にまぁそれなりには描かれていたかなと思いますが、それ以外がなんか薄っぺらいなと感じた。
旅先で出会ったリサが超絶いいな!(オレ好みや!)と思ったのと、スペンサーは敬虔なカトリック教徒なんやなと思ったくらい。

で、事件が起きたまさにその時、幼馴染の仲良し三人組であったり、乗客の一部がとった行動は非常に勇敢であり、500人超の乗客の命を救った英雄的行動だということも十分わかるんですけど、事件を起こしたイスラム過激派の男のバックボーンなり理由が全くと言っていいほど描かれていないことだと思うんですよ。
勿論テロ行為なんか赦されることではない、テロリストがテロを行う理由なんか知ったことかと言えばそうなのかもしれないけれど、特定の神様を信奉していない私個人としましては、いや、イスラム過激派がテロを行う理由というのは重要なことやと思うよ。と思うわけです。
綺麗事かもしれませんけど、キリスト教だろうがイスラム教だろうがユダヤ教だろうが、自分の信じる宗教であったり神様を信奉しつつも、他を認める柔軟さや寛容さなどがなければ、こういった凄惨な事件がなくなることはないと思うわけで、一方が何を考えてんだかわからないような描き方は、ちょっと不親切なんじゃないかなと思うんですね。みんながみんな色々理解したりしようとしているわけではないよと。

何より気になったのが、最後のフランスのオランド大統領から勲章を与えられるシーンで、オランド大統領がアメリカ、英国、そしてフランス云々とその国籍を称えるような言葉ですね。
確かに英雄達は、人命を守ると同時に国の威信なりを守ったのかもしれん。
しかしそれ守ったのは個人や。称えられるのは国籍が何であれ個人でえぇやん。
いや、個人を称えてるのわかってるんですけど、何故かしら違和感を覚えてしまった。
しかし、このような撮り方をしているからこそ、個人的には疑問を多く感じ、目で見えるもの以上のことを考えることができてるんじゃないかと思います。

それにしてもリサ役の人がホントよかったなぁ。
凛太朗

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