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ナショナル・シアター・ライヴ 2018 「イェルマ」のchaooonのレビュー・感想・評価

4.2
NTLiveアンコール上映で鑑賞✨
最近のアンコール上映はいつも同じようなラインナップで一通り観てしまってたところ、これは久々に観たことないやつ来た〜🙌

英国ヤング・ヴィック劇場で2016年に上映された舞台🇬🇧
スペインの劇作家フェデリコ・ガルシア・ロルカによる1934年初演作の戯曲を、現代のロンドンに舞台を移しサイモン・ストーンの斬新な演出により大きく生まれ変わった衝撃作💥

翌年のオリヴィエ賞で最優秀リバイバル賞や主演のビリー・パイパーが最優秀女優賞など演劇賞を総ナメにして絶賛された作品🏆

編集者としてのキャリアも確立し、プライベートも長年のパートナーとロンドンに家を購入する等、女性として自立し順風満帆な幸せを歩んでいた主人公が、不妊の苦悩から人生が破綻していく様を描く。

イェルマ(Yerma)はスペイン語で「不毛」の意味。
元の戯曲の主人公の名前がイェルマだけど、今作のヒロインは最後まで名前が呼ばれず、章の幕間のテロップやエンドロールでも「HER」とだけ示される。
今作の物語と合わせて意味深く感じる設定。

元の戯曲は未見だけど、スペインの田舎で不妊に悩むという設定で時代的や土地柄的にも嫁としての義務を果たしていないことへのプレッシャーだったり、女性としての幸せを手に入れられない絶望感に苛まれるのは容易に想像出来るしシンプルな苦痛の物語に感じる。
それを今作では現代の都会に生きる女性の物語として描くけど、より複雑になった幸せの在り方がありながらも、やっぱり自分の一番の望みが叶わないことへの絶望と、執着心故に悲劇に陥っていく女性を同じように描いていることに驚く。
同じどころかむしろこちらは周りから子供へのプレッシャーが実際にあるわけもなく、望んでいるのは彼女自身のみで、その事に異常なほど執着してしまう彼女の狂気が際立っていたように感じたし、ラストの顛末にも衝撃を受けてしまう😨
幸せを願って行動をしているはずなのに、望めば望むほど幸せに向かうどころか不幸のドツボにハマっていく姿は皮肉というにはあまりに残酷過ぎた。

仕事もプライベートも充実していて、他の人が羨む人ような生き方をしているように感じる彼女が唯一コントロールできない「妊娠」に翻弄される。
過去に別の男性の子を妊娠→堕胎の経験だったり、子供を望まない姉の妊娠だったりも要因となり、彼女の苦しみを倍増させていく。
どんなに時代が流れて価値観が変わっても、幸せの形が多様化しても、結局のところ女性は子供を産む存在としてしか価値を見出されない、そんなまだ世の中に残るじっとりとした考えを突きつけられてる気がして苦しかった。

物語の描き方もそうだけど、とにかく主演のビリー・パイパーの凄みが圧倒的🥶
後半の狂気じみた姿はもうただただ凄い…。
見覚えあると思ったら好きだったゴシックホラードラマ『ペニー・ドレッドフル』の娼婦→クリーチャーの花嫁役だった方🥹
あのドラマ今考えるとホントキャストが豪華すぎて後々驚くことが多い❣️
あの役も結構過激な役だったけど、今作は過激なんてもんじゃなかった😨

主人公のパートナー役は『NTLiveるつぼ』でも記憶に新しいブレンダン・カウエル!
この方も後半のいがみ合いのシーンの熱演ぶりが凄かった🥶
2人ともこれを毎日舞台でやってるのかと思うとホントメンタルが心配になるレベル。
いや、いつもこれNTLiveのレビューに書きがちなことなんだけど、ホントこの2人が過去イチでメンタル心配😨

舞台セットも独特で、ステージを前と後ろから観客で挟み込むようなセンターステージ。
中央のステージはアクリル板で四方を囲まれていて、まるで水槽の中を覗き見るような舞台。
中のセットは簡素ではあるけど、カーペット、芝生、砂利?と場面ごとに床が変わったり、庭に木が生えてみたり、場面ごとのセットチェンジどうやってるのか不思議過ぎる🤔
主人公のメンタルが振り切れるフェスのシーンでは雨も降らせてるし、とにかく斬新!

リアルな赤ちゃんまで舞台に登場して来て凄い👶👏
泣かないどころか満面の笑みで、そんなところも凄すぎ🤣

章ごとを区切る暗転とテロップ、そして爆音!
前半の章の不穏な女性のコーラスみたいなのはちょっとミッドサマーを彷彿とさせるわ😂
音楽使いも印象的だったわ。
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