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それだけが、僕の世界のmaiのレビュー・感想・評価

それだけが、僕の世界(2018年製作の映画)
4.0
「不可能とは事実ではない。思い込みだ」

https://tokushu.eiga-log.com/movie/14690.html
自閉症のため扱いにくいと言う理由で優勝を逃しますが、そんな彼の才能を見込んでハン・ガユルという元ピアニストの女性が演奏会に演者として登壇できるように取り計らってくれます。母もジョハの力を借りて病室を抜け出し、ジンテの演奏を聴けました。
その後、母は亡くなってしまうのですが、葬式場を抜け出したジンテの手を取ってジョハが歩いていくところでこの映画は終わります。

ストーリーは王道中の王道、超定番なのですが、役者の方々が悉く素晴らしいです。
イ・ビョンホンの明暗のついた演技もさることながら、パク・ジョンミンの愛らしい姿に見事に演じ切った自閉症の役…本当に良かったです。
ジョハにはおちゃらける場面もあれば、怒りをあらわにする場面もあります。しかし、そんな彼でも「親父と母さんは許さない」と言いながらも母親に怒りをぶつけることはしません。そこに彼の葛藤が現れています。自分を置いて出て行き、今は自分ではない息子に目一杯の愛情を注ぐ母親を憎みながらも、彼女の境遇も理解し、自分のことを気にかけてくれることに対して家族としての愛情も感じています。他の映画ならば、思いの丈をありったけぶつけた喧嘩で和解するなどの瞬間瞬間の心の移り変わりが描かれるのかもしれませんが、この映画は彼の中で、家族と過ごす時間が積もっていくことが何よりの心の変化をもたらしています。そういう意味では、彼の心情の変化はわかりにくいのですが、でもそこがリアルだなぁと感じました。
そして、ジンテ…本当に純粋無垢!という感じで、嘘でしょ〜って思うことをやってのけても、どうしても憎めない愛らしさがありました。彼の、自分を偽らない姿がジョハにも響いたのかなと感じます。さらに、ピアノの演技。純粋無垢を超えて、何か神々しささえ感じるような…ピアノが好きで好きで堪らないという表情が、見ていて気持ちいいくらいでした。ピアノの演技を吹き替えなしでやったというのも驚きです、あまりに動きが早すぎて途中指の残像が見えましたよ…。彼もなかなか心情が表面に上手く現れないのですが、兄に緊張しながらも親しみを持っているのは伝わってきて、最後のシーンでジョハに手を握られた時の嬉しそうにしている表情がとても印象的でした。

母親には色々引っかかるところもありますが(ジョハの言い分も聞いて、決めつけないで…)、彼女がジョハのこともジンテのことも息子として愛してることが伝わってくるので、あれは彼女の精一杯なのだろうと感じました。というか、全体的にジョハの大人な対応に助けられてましたね…40歳の大人といっても、自分を一度見捨てた母親やその息子のことを思いやれるってなかなかだと思います。

ストーリーとしてはど定番だけれど、キャストの演技が本当に素晴らしくて、涙するシーンが多くありました。観終わった後は心の温まる映画です。
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