MasaichiYaguchi

金沢シャッターガールのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

金沢シャッターガール(2018年製作の映画)
3.4
桐木憲一さんの「東京シャッターガール」の姉妹編で、映画と同名コミックをオール石川県ロケで、金沢在住の現役高校生を中心としたキャストで実写映画化した本作は、この手の青春物にありがちな刺激的な内容、三角関係、複雑な家庭環境、難病とか事故等、主人公たちを苦境に陥れるようなことは出て来ない。
だから、そういったことを期待して観に来た人は肩透かしを食らうと思う。
本作に登場する人物たちは古都・金沢に住んではいるが、至って普通の女子高校生たちで、恰もドキュメンタリーのように学校生活を中心にその青春が描かれていく。
ヒロインの夏目花菜は写真好きで、いつもデジタル一眼レフを持ち歩いていて、主に友達を被写体に撮影している。
花菜には中学時代からの親友が3人いて、いつもつるんでいたのだが、高校入学と共にその関係性に変化が訪れる。
私も写真が趣味で、勿論デジタルではないが一眼レフを学生時代に持ち歩いていたこともあって花菜に共感を覚えた。
私も経験があるので、高校生になって親友たちが夫々学園生活を歩み始めたことに対する焦り、自分だけ取り残されたような思いが痛い程分かる。
淡々と痛みや葛藤を帯びた花菜の青春の日々が描かれるのだが、終盤の方で登場する海辺でのキャンプシーンは心揺さぶられてウルッとしてしまった。
青春映画としては地味な作品ではあるが、観客はヒロインを含めて、登場人物の誰かしらに自分の若い頃を投影してしまうのではないかと思う。